侍ジャパン敗退の衝撃は、単なる「井端ジャパン失敗論」では終わらない。14日(日本時間15日)の第6回WBC準々決勝(ローンデポ・パーク)でベネズエラに逆転負けを喫し、日本は大会史上初のベスト8敗退。そこで一気に現実味を帯びてきたのが、大谷翔平(31=ドジャース)の「侍ジャパンでの二刀流」は実は2023年大会が最後だったのではないか――という見解だ。28年7月開催のロサンゼルス五輪、第7回WBCを見据えても、もはや球団も本人も、かつてのようには踏み切れない可能性がある。
今回の敗戦は、大会終了後に辞意を表明した井端弘和監督(50)にとっても重い。24年11月のプレミア12で頂点を逃し、今大会もWBCでは過去最悪となる8強止まり。連覇を前提に組み上げられたチームが、肝心の決勝トーナメント初戦で崩れた現実はあまりにも痛い。だが、球界関係者の間でより深刻に受け止められているのは「次も大谷を二刀流では呼べないのではないか」という懸念だ。
次の大舞台は28年7月のロサンゼルス五輪。ただ、日本は現時点で出場決定には至っていない。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が2月に公表したロサンゼルス五輪の予選システムでは、アジアの出場枠は27年11月開催の第4回プレミア12などを通じて争われる形で、日本はまだ本大会行きを確保していない。しかもMLB選手の五輪参加も正式決着には至っておらず、コミッショナーのロブ・マンフレッド氏は前向きな姿勢を見せつつも球団側の承認や日程面の調整が必要との立場を示している。
仮に日本が五輪切符をつかみ、大谷の参戦自体が可能になったとしても、その時には34歳。しかも開催は真夏のシーズン中だ。投打二刀流のフル稼働を所属球団が素直に認めるかとなれば、関係者の見立ては決して楽観的ではない。実戦登板の管理、打者としての出場、調整期間、故障リスク――。すべてが通常の代表活動より重くなるからだ。二刀流は「出ればいい」では済まされず、使い方そのものが最大の交渉案件になる。
さらに、30年3月開催が有力視される第7回WBCだ。この時、大谷は35歳になる。もちろん打者としてなら十分に第一線の可能性はある。だが「投手・大谷」まで含めた代表仕様の二刀流となると、話は全く別だ。実際に大谷本人は25年11月のオンライン取材で「トレーニングの反応的にも身体的にも今がピークあたりかなと思っている」と率直に語っている。全盛期を自覚しているからこそ、今後はそのピークをどう長く保つかがテーマになる。代表戦で二刀流を上積みするより、メジャーのシーズンで最適管理を優先する方向に傾くのは自然な流れでもあるだろう。
事実として、侍ジャパン周辺やMLB関係者の間では「大谷の代表二刀流は前回大会が完成形であり、同時に最終形だったのかもしれない」との見方が現時点で静かに広がりつつある。打者専念で今大会を終え、敗退直後に大谷はロサンゼルス五輪も含めた侍ジャパンでの活動について「代表戦はもちろん、リベンジというか挑戦したいですし、どういう形で次、出場できるか自分自身も含めて分からないですけど、次の機会にまた集中したいです」とコメント。そう口にしていることから、今後も代表入りそのものは十分にあり得る流れとなるだろう。
だが、それはあくまでも「打者・大谷」が中心で「投手・大谷」まで背負う形ではない――。こうした見解が今、侍ジャパン、MLB関係者の間で定説化しようとしている。今大会での敗退は侍ジャパンの挫折であると同時に、日本野球が無意識に当てにしてきた〝代表の万能カード〟をもう次回は切れないかもしれないという非情な現実を突きつけた。
侍ジャパンは、ただ敗退しただけではない。今後の国際大会では、大谷という強力な武器を同じ形でもう使えない可能性が大きいことも浮き彫りになったのだ。いわば「ロス五輪問題」と「2030年危機」が同時に忍び寄る苦境は、日本球界が〝氷河期の入り口〟に立たされたと評せるのかもしれない。













