WBC1次ラウンドA組で9日(日本時間10日)、プエルトリコがキューバを4―1で下し、全勝同士の直接対決を制して準々決勝進出を決めた。
会場となったプエルトリコ・サンフアンのヒラム=ビソーン・スタジアムは雨の影響により開始が1時間以上遅れるという悪条件となったものの、集中力が途切れることはなかった。2回一死満塁の好機で、今大会を最後に現役引退を表明しているベテラン、マーティン・マルドナド捕手(39=前パドレス)が左翼線へ走者一掃の3点適時二塁打を放ち、試合の主導権を完全に掌握。ダルビッシュ有投手(39=パドレス)や、かつてエンゼルス時代に大谷翔平投手(31=ドジャース)の女房役を務めた名捕手が二塁上で両手を広げ、地元ファンの大歓声に応える姿は、まさにチームの精神的支柱そのものだった。
この劇的な勝利を遠くから熱い眼差しで見つめていたのが、ドジャースのキケ・ヘルナンデス外野手(34)だ。左肩手術のリハビリ中のため今大会への出場は叶わなかったが、プエルトリコで行われる1次リーグの2試合目まで帯同することを決意。過去2大会で主力を担ったヘルナンデスは、米スポーツ専門局「ESPN」や米有力紙「USA TODAY」など主要メディアに対し「チームの一員でなくとも、あの集団のリーダーの一人になれる」などと熱く語り、自らの調整よりもナショナルチームへの献身を優先させた。盟友のノーラン・アレナド内野手(34=ダイヤモンドバックス)の代表入りにも尽力し、結束の儀式である金髪のブリーチも欠かさない。7日(同8日)のパナマ戦勝利を見届けたあと、チームから離れたものの戦況を見守っていた。フィールド外から放たれるキケの情熱が、確実にチームの底力となっている。
試合は5回にコルテスの犠飛で追加点を挙げたプエルトリコが、キューバの反撃を6回の1点のみに抑え込んで逃げ切った。9回には前回大会の負傷から復活を遂げた守護神エドウィン・ディアス投手(31=ドジャース)が登場し、お馴染みの名曲「Narco」がスタジアムに響き渡る中で完璧な火消しを見せた。ドジャースが3年総額6900万ドル(約103億5000万円)を投じた母国の至宝がマウンドで躍動する光景は、スタンドのヘルナンデスにとっても何よりの良薬となったに違いない。
「これは我々のオリンピックだ」と断言するヘルナンデスにとって、WBCは単なる大会ではなく、プエルトリコ人の誇りを示す聖域である。引退を控えたマルドナドの執念と、欠場しながらもリーダーシップを振るうヘルナンデスの献身。これらが一つに溶け合うプエルトリコは、強固な絆を武器に初の世界一への階段を駆け上がっていく。












