【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「You(君か)!」 野球の取材には早すぎると悪態をつきながら、寝ぼけ眼でたどり着いたヒューストンのダイキン・パーク。WBC1次ラウンドB組の開幕戦を翌日に控えた午前9時、懐かしい顔の元気いっぱいの笑顔に、一気に目が覚めた。イタリア代表を率いるフランシスコ・セルベリ監督だ。私が駆け出しの頃、彼はヤンキースのルーキーで公私ともに世話になった人物である。
「ベネズエラの血に誇りを持っているが、イタリアは僕の人生を変えてくれた。ライフスタイルも考え方も、それまで大事だと思っていたことがすべて書き換えられたよ」
元々情熱的な男だったが、今は1年の半分をイタリアで過ごしているという。彼もいい歳になり「イタリアを五輪に連れて行きたい。いずれは全員がイタリア生まれの選手で構成されたチームでWBCを戦うのが夢なんだ」と、その語り口はすっかりイタリアンな熱を帯びていた。
続いて、ブラジル代表がフィールドに現れた。日系人の歴史を知っていても、背番号の上に記された日本語の名字の数々には、どこか「なんじゃこりゃ」と面食らってしまう。
そんな中、ある選手のヘアスタイルにくぎ付けになった。ダンテ・ビシェット。あの元オールスター選手を父に持ち、ブルージェイズからメッツに移籍した兄ボー・ビシェットにもよく似ているが、とにかく「髪の毛が真っ緑……」。思わずつぶやくと「クールだよね」と隣にいたルーカス・ラミレスが相づちを打ってくれた。
このナイスガイは誰かとスマホで検索し〝あの〟マニー・ラミレスの息子だと知った時には、思わず記事を3度見した。「オヤジは今でも僕より早く起きてトレーニングしているよ」と誇らしげに語るルーカスはまぶしい。自由奔放な行動で知られたドミニカ共和国の英雄の息子が、20歳にしてブラジル代表として戦う事実に、こちらの頭が追いつかない。首を振りながら広報に確認をとると「ジョセフ(コントレラス)とは話した? 彼も『ブラジル人の母を持つトリオ』の一人よ」と教えられた。
父はキューバ出身の名投手ホセ・コントレラス。3人とも母がブラジル人、父が元大リーガーという共通点を持ち、アメリカで育った。ジョセフに至っては現役の高校生だ。今大会最年少ということもあり、ひときわ注目を浴びていたが、ひょうひょうとインタビューに応じる姿は、まだ怖さを知らない17歳といったところか。「今は数学の宿題が残っていて、今朝は社会科を終わらせた。戻ったら試験が待っているから気が重いよ」
フィールド上ではまず聞くことのない会話が新鮮で、場が一気に和んだ。この後、根っからの明るさが伝わるメキシコ代表が空気を盛り上げたかと思えば、米国代表が登場した瞬間に空気が凍りつく。これほどまでに殺気立った彼らの表情は、ポストシーズンでもお目にかかれないかもしれない。
そして最後は、まるでオチのようにイギリス代表が控えていた。チームの練習風景をその場で描く、宮廷画家ならぬ〝代表画家〟が同行しているのだという。そういえばバハマはかつて英国領だったと歴史の教科書を思い出した。野球をやる上で、かつての植民地支配の歴史がアドバンテージになる日が来るとは一体誰が想像しただろうか。
世界大会という大舞台の取材は、これだから面白くてやめられない。















