WBC韓国代表のブルペンに、遅れてきた〝刺激剤〟が滑り込んだ。最速154キロを投げ込む金澤延投手(キム・テギョン=20、斗山ベアーズ)が、3月開催の第6回WBCでメジャーリーガーたちと対峙する心境を口にした。韓国メディア「OSEN」が伝えている。

 WBC1次ラウンドで日本代表と同じC組の韓国代表は、27日まで沖縄で事前キャンプを実施。24日には沖縄・嘉手納球場でKIAタイガースと練習試合を行い、金澤延は救援で1回を1安打1奪三振、無失点に抑え、わずか19球でゼロを刻んだ。登板直後の空気が変わったのは、数字よりも「球の見え方」だったという。

 柳志炫監督(リュ・ジヒョン=54)は「球速を確認したかった。視覚的にもスピードは良かった。打者の前での球の展開が素晴らしかった」と評し、短いイニングに意味を与えた。

 しかし本人は浮かれない。レーダーガンは最速154キロ。それでも「球速はあまり出ていないと思う」と不満を漏らし、「球威が足りなかった。変化球も思った通りではない」と自己批判を並べた。周囲は「速い」と映り、本人は「まだ足りない」と感じる。大舞台を見据えた投手ほどハードルは高く、最初の合格点を自らに出さない。

 そもそも金澤延は、最終メンバーに一度落ちている。だからこそ今回の追加合流は、単なるタナボタではない。負傷により代表参加を見送ったライリー・オブライエン投手(31=カージナルス)の代役として呼ばれ、初登板で無失点。本人も「足りない部分が多かったので受け入れられた」と現実を飲み込みつつ、「大きな大会で必要とされる選手になれるよう成長したい」と決意に変えた。補欠という立場が、逆に闘争心をかき立てている。

 移動もかなり荒く、ハードスケジュールを強いられた。斗山ベアーズのキャンプ地・オーストラリアから韓国、そして日本の沖縄へ。疲労を警戒しながら「高めに浮く球を抑える」と課題設定を口にした。さらに代表ではベテラン右腕の盧景銀投手(ノ・ギョンウン=41、SSGランダース)に「長持ちのコツ」を聞いたという。「毎年80イニング投げる準備」「疲れの抜き方」「けがをしない方法」――。154キロより、こうした質問の方がWBC向きだ。

 数字で裏付けるなら、金澤延は2024年のルーキーイヤーから昨季までKBOの2シーズン通算成績で124試合登板、43セーブ、同防御率2.81を記録し、同年には新人王にも輝いている。昨季も24セーブでブルペンの最後を任された。試合の最後に立つ「胆力」はすでに証明済み。その一方で、国際舞台で必要なのは「球速」だけではなく「打者の前でどう見せるか」。柳志炫監督が評価したのも、まさにそこだった。

 金澤延は過去にドジャースとの練習試合も経験しており、WBCで再びMLB級の打者と当たる可能性を見ている。「大事な場面で打席に立つなら、自然と前向きに考える」。補欠から始まった物語は、まだ〝序章〟だ。韓国代表の勝ち筋が、静かに一つ増えるのか。それとも154キロが、国際舞台の空気に飲まれるのか――。いずれにせよ、金澤延に対しては韓国国内で「打倒・日本の秘密兵器」「WBC初優勝のキーパーソン」と見る向きもある。沖縄の1イニングは、その分岐点を垣間見せた格好のようだ。