トロントが、今冬の「賛否」をひっくり返しにきた。ブルージェイズが右腕ディラン・シース投手(30=前パドレス)と7年総額2億1000万ドル(約321億円)で大型契約を結んだFA補強は、一部で「長過ぎる」「高過ぎる」ともささやかれている。

 しかしながら、米メディア「ファンサイデッド」傘下のブルージェイズ専門サイト「ジェイズ・ジャーナル」は「むしろファンが支持すべき移籍だ」と強調。今季開幕前のスプリングトレーニング中に、セイバーメトリクスの手法を用いる予測システム「PECOTA」がトロントを88・5勝&地区連覇〝確実視〟の位置に置いたことも「空気を変えている」という。

 鍵を握るのは数字に加え、シースの〝役割〟だ。MLB公式サイトはシースについて、直近5季でいずれも165回超を投げ、200奪三振以上を維持してきた「耐久力と奪三振率」を最大の魅力に挙げる。確かに昨季はパドレスで防御率4点台と「強烈な見栄えではなかった」とはいえ、それでもブルージェイズの球団史上最大級のFA契約で〝開幕の柱〟を確保した意味は重い。

 さらにスポーツ専門サイト「Sportsnet」などカナダの大手複数メディアが報じているように、前出のジェイズ・ジャーナルも「この契約が見た目より、かなり現実的である点」について掘り下げた。契約には繰り延べが含まれ、ぜいたく税(CBT)上の年平均額が圧縮される仕組みだという。スターに投資しつつ、補強の余地も残す――。ドジャースが大谷翔平投手(31)ら超大物選手と大型契約を締結し繰り延べしたように、トロントが狙うのも単なる話題作りではなく「勝つための設計」だ。

 そして関心が集まるのは、シース以外のFA獲得選手との兼ね合いだ。同じくブルージェイズが今オフに4年総額6000万ドル(約92億円)の大型契約で獲得したのが、巨人の主砲だった岡本和真内野手(29)。MLB公式サイトが岡本について「昨季は負傷で出場が限られながらも、出場した試合で圧倒的な打撃内容を残した」と評しているように、その下馬評を買っているトロント側の期待もかなり高い。言うならばブルージェイズは「シースら屈強な投手陣で試合を支配し、岡本を加えたMLBトップクラスの打撃力で仕留める」勝ち筋を同時に組み上げにきた格好だ。

 2026年のブルージェイズの戦力と結果予想にはセイバーメトリクスでも高評価を与えられ、主要メディアからも今冬の補強に関して太鼓判が押された。シースの奪三振によって流れを引き寄せ、岡本の長打が空気を大きく変える――。昨年のワールドシリーズでドジャースの前に涙を飲んだトロントの面々の「逆襲」が始まろうとしている。ちなみにシースと岡本の合計獲得額は計2億7000万ドル(約413億円)。ブルージェイズにとっては、緻密な計算に基づく〝V投資〟と言えるかもしれない。