エースの背中は偉大――。ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート団体(ミラノ・アイススケートアリーナ)が6日に開幕し、日本は計23点で2位発進だった。女子ショートプログラム(SP)では、坂本花織(25=シスメックス)が今季自己ベストの78・88点の1位で10点を獲得。さすがの演技を見せたスケーターは、気配りの心も超一流だ。

 今季限りで引退する坂本にとって、泣いても笑っても最後の五輪。強い覚悟を持って挑んだ初陣は、3本のジャンプを全て着氷させ、スピン、ステップも最高難度のレベル4にそろえた。「よかったって気持ち。本当にすごくいいスタートダッシュが切れた」と笑みを浮かべた。

 日本に勢いをもたらした坂本の存在は、フィギュア界の次世代を担う後輩たちにとっても大きい。世界ジュニア女王の島田麻央(木下グループ)は「ジュニアとシニアは全然プレッシャーが比べものにはならないくらい違うと思うけど、プレッシャーを感じさせない滑りが印象的だし、本当に尊敬している」と刺激を受けている。

後輩の島田麻央(左)からも慕われている坂本花織(中)。右は樋口新葉(2024年)
後輩の島田麻央(左)からも慕われている坂本花織(中)。右は樋口新葉(2024年)

 競技面はもちろんだが、人間性にも憧れを抱いている。坂本が代表争いで心身ともに疲労が大きかった昨年11月上旬の出来事。ケガの影響で調子が上がらない島田に対し、NTC(ナショナルトレーニングセンター)で一緒に練習をしていた坂本が助言をくれたという。

 島田は「『どれだけ頑張っても調子が上がらなくて、そういう時期はありましたか?』と相談したら『自分もあったよ。ケガでまとめられないことはみんなあること。いつも頑張っているから、自分らしくこれからも頑張ってね』と励ましてくれた。最後にはLINEまでしてくれて、そのおかげで調子が上がってきた」と証言。坂本の言葉で自信を取り戻した島田は、昨年12月のジュニアグランプリファイナルでは史上初の4連覇を果たした。

 坂本の優しさを肌で実感した島田は「坂本選手も自分の試合があるのに、こんなジュニアの選手に気を遣って励ましてくれる選手なんて、なかなかいない。本当にうれしかった」と感謝。さらに「坂本選手はいろんなジャンルの曲を踊っているし、すごい滑りをしている。私もいろんなジャンルを滑りこなせるようになりたい」とモチベーションアップにつながっている。

 結果だけでなく、普段の行動でも後輩たちに〝女王の矜持〟を示してきた。その姿勢は今大会も健在だ。「2日目、3日目がそれぞれベストコンディションでベストパフォーマンスができれば」とチームメートにエール。金メダルを争う米国との差はわずか2点。北京五輪超えの結果で後輩たちに新たな夢を届けてみせる。