米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」電子版「ON SI」が、今オフにおけるMLB各球団の支出状況を詳細な数字とともに分析した。浮かび上がったのは常態化しつつある〝異次元のマネーゲーム〟と、その中で際立つドジャースの特異な立ち位置だ。

 ドジャースは今冬、カイル・タッカー外野手(29=前カブス)、エドウィン・ディアス投手(31=前メッツ)らを獲得し、FA市場に総額3億1450万ドル(約497億円)を投下。2026年のCBT(競争力均衡税=通称ぜいたく税)対象年俸は4億1200万ドル(約651億7000万円)に達し、税金込みの総コストは5億7400万ドル(約907億9800万円)と試算されている。

 タッカーの年平均6000万ドル(約94億9000万円)と、大谷翔平投手(31)の超大型契約に象徴される繰り延べ支払いを駆使した資金運用は、他球団とは明らかに異なっている経済圏での戦いを物語る。

 しかし驚くべきことに、今オフのFA支出額でドジャースを上回った球団が存在する。それがブルージェイズだ。ディラン・シース投手(30=パドレス)、岡本和真投手(29=前巨人)らを次々に獲得し、総額3億5300万ドル(約554億円)を費やした。26年のCBT対象年俸は3億1240万ドル(約494億2000万円)に膨らむ見通しとなっており、昨年の頂上決戦で世界一を奪われた怨敵ドジャースを強く意識するかのごとく、ワールドシリーズ制覇へ向けた〝総力戦〟の様相を呈している。

 ニューヨーク勢も黙ってはいない。メッツはボー・ビシェット内野手(27=前ブルージェイズ)、デビン・ウィリアムズ(31=前ヤンキース)らを補強し、約3億4300万ドル(約542億8000万円)を支出。オーナーのスティーブ・コーエン氏が、プレーオフ逸脱という失敗の再現を何としても避けようとしている姿勢が透けて見える。一方、ヤンキースは約1億9130万ドル(約302億7800万円)を費やしたものの、戦力の上積みという点では評価が分かれ、同地区のブルージェイズに地区Vを奪われた現状を覆せるかは不透明だ。

 対照的なのが、ブルワーズ、アスレチックス、ナショナルズといった球団だ。支出は数百万ドル規模にとどまり、事実上の再建路線を選択。26年末に控える労使交渉(CBA)を見据え、無理な投資を避ける〝静観組〟も少なくない。

 史上空前の資金投下が続くMLB。その果てに待つのは王朝の固定化か、それとも制度の抜本的見直しか。次期CBAを前に、リーグ全体は確実に分岐点へと近づいている。