「ヘタクソ!」チャントへの回答は――。米国・WWEのレジェンド、ジョン・シナ(48)が13日(日本時間14日)の「サタデーナイツ・メインイベント」(ワシントンDC)で、〝皇帝〟グンターを相手に引退試合を戦う。

 2002年6月のWWEデビューから23年半にわたるキャリアに終止符を打つが、〝優等生〟とみられがちなシナも順風満帆では決してなかった。特にWWEのエースとなった2000年代後半にはユニバース(ファン)から「シナ最低!」と、ブーイングも飛び交うようになる。なかでも強烈だったのは、試合中に「You can’t wrestle!(ヘタクソ!)」と屈辱チャントが起きたことだ。

 もともとボディービルダーだったシナはリング上での動きが硬く、「ロボットレスリング」とファンにやゆされたこともあった。得意技も5つだけ。一方で若年層を中心に人気だけはすさまじかっただけに、コアなファンからは皮肉を込めて「お前はプロレスが下手だ」のらく印を押されていたのだ。

 YouTubeのWWE公式チャンネルで公開された「FOXスポーツ」の著名リポーター、トム・リナルディ氏によるインタビューは、「ABEMA」にて放送された8日(日本時間9日)のロウ(ミズーリ州カンザスシティー)でも一部が紹介された。シナは心に残っている批判について「ずっと刺さっているもの。それは観衆から実力を問われるもの。〝ヘタクソ〟チャントだ。俺は5つの技だけ使って連勝していたからね」と話した。

 では〝プロレス下手〟の批判にどう対処したのか? 「キャリアの途中でレスリングスクールに戻ったんだ。(スクールの)新人選手たちに『俺、何ができると思う? 何か教えてくれないか?』って聞いたんだよ」と衝撃の告白。世界最大団体エースが、プロレススクールの練習生たちにアドバイスを求めたのだという。

 さらにファンからの批判には一切反論せず、当時新世代だったサミ・ゼインやケビン・オーエンズ、世界最高峰のテクニックを持つAJスタイルズらにも相談して学びを得た。「『やつら(ファン)に何がわかる? 俺はレスリングができるって!』なんて思わなかった。違うんだよ。より良くなるよう努力し、リセットボタンを押すようなことはしない。より良くなり、ありのままの自分になるよう努めるんだよ」

 シナは今年10月のPLE「クラウン・ジュエル」でAJと一騎打ち。ライバルたちの必殺技を次々に披露すると、AJも真正面から受け止めた。アラフィフ同士とは思えない白熱の攻防を繰り広げて、歴史に残る名勝負に。かつて〝ヘタクソ〟と罵声を浴びた筋肉隆々の男は、20数年の時を経てプロレスの〝達人〟となっていた。