猛虎の主砲が、いよいよ「本物の打者」として完成形に近づきつつあるようだ。阪神・佐藤輝明内野手(26)は2025年シーズン、セ・リーグで本塁打王と打点王の2冠を獲得。40本塁打、102打点をたたき出し、名実ともに〝虎の顔〟へと上り詰めた。ひそかに2リーグ制以降のセで46年ぶり史上3人目&4度目の〝珍快挙〟を今季成し遂げていたことも、その裏付けとなっている――。

 甲子園名物の浜風にしばしば泣かされてきた左打者が、その鬼門すら力でねじ伏せた。右翼から左翼へと吹き荒れる風に押し戻されるはずの打球を、規格外のパワーで次々とスタンドイン。プロ5年目で初のキングに輝いた一方で、今季は意外な〝珍記録〟も生まれていた。

 それは死球ゼロ――。本塁打王を獲得した打者としては極めて珍しく、今季の佐藤輝はルーキーイヤーから24年シーズンまで食らっていた死球を139試合に出場しながら一度も受けなかった。

 1950年の2リーグ制以降、セの「0死球・本塁打王」は佐藤輝で史上3人目。「ミスタータイガース」のレジェンドOB・掛布雅之氏が自身初の本塁打王に輝いた79年以来、実に46年ぶり4度目の快挙達成だ。

 奇遇ながら、今季はパ本塁打王のレイエス(日本ハム)も同リーグで23年のポランコ(ロッテ)以来となる〝0死球キング〟に輝いた。

「ヒゲ&メガネ」でダンディーに母校凱旋を果たした佐藤輝明
「ヒゲ&メガネ」でダンディーに母校凱旋を果たした佐藤輝明

 ただセに絞れば、佐藤輝の記録の〝希少価値〟は非常に高いと言い切れる。17年に35本塁打でセ最多を記録した中日の元助っ人・ゲレーロは15死球を受け、今オフの米大リーグ挑戦を控えるヤクルト・村上宗隆内野手(25)も令和初の3冠王となった22年には7死球を記録。歴代の名だたるセのキングたちと照らし合わせれば、なおさらだろう。

 佐藤輝をよく知る関係者も驚きを隠さず「ホームラン王でデッドボールゼロって、まあないことですよね。最近だったら村上も(巨人の)岡本もそれなりに当てられていたし」と目を白黒。その上で今季の佐藤輝について「外角をしっかりホームランにしていたし、これまでやってきたことが実を結んだと思います。成長したなと」と感慨深げに語り、技術面の向上を評価した。

 その半面で同関係者は、佐藤輝に対する他球団の攻めに厳しい目を向ける。「もっと内角を攻めたらいいのにと思いますよ。今年はあまりにもインコースを攻められることが少なかった。当てたくないからなのか、外角に投げておけばという気持ちがあるのかはわかりませんが…不思議でしたよね」と首をかしげた。

 本来、強打者へ厳しい内角を突くのは投手の鉄則。そのセオリーを欠いたまま、やすやすと虎の主砲を本塁打王へと駆け上がらせたことについて他球団の〝甘さ〟を指摘した格好。それでも当人には「内角を攻められても、それをはね返して来季も打ちまくってほしいですけどね」(前出関係者)と期待を膨らませる。

 死球ゼロで本塁打王に輝いた破格の猛虎スラッガー。来季も新たな常識を覆し、さらなる飛躍を見せる可能性は十分だ。