阪神は15日の「2025 JERA クライマックスシリーズ セ」第1戦(甲子園)に2―0で快勝。アドバンテージを含め2勝0敗とし、2年ぶりとなる日本シリーズ進出へ向けて大きく前進した。ポストシーズン独特の緊迫感が漂うロースコアの接戦で際立ったのは「普通ではない野球」を大一番で貫徹した1年目指揮官・藤川球児監督(45)の〝胆力〟と、それに応えることができた虎ナインたちの確かな〝地力〟だった――。
意表を突かれたのは東―山本のDeNAバッテリーだけではない。球場を埋め尽くした4万2643人の大観衆も同様だった。
0―0で迎えた6回の阪神の攻撃。先頭・近本光司外野手(30)が遊撃への内野安打で出塁すると、2番・中野は手堅く犠打で走者を二塁へ進める。ここまでは今季何度も見てきた定石通りの展開だ。イレギュラーな一幕が発生したのは、この直後だった。
打席には3番・森下。ここで東が初球を投じようとした瞬間、二走・近本は左腕のモーションを完全に盗み切ったかのようにスタートを切り三盗に成功。一死三塁とチャンスが大幅に広がると、虎党のボルテージは一気に沸点へ。スタンドの雰囲気は明らかに一変した。
何としても先制点を与えたくないDeNAは前進守備を余儀なくされたが、カウント1―1からの3球目を捉えた森下の打球は二遊間を割り中前への適時打。リスクを承知で仕掛けたここ一番の走塁策が決勝点に直結した。
今季セ・トップの100盗塁をマークした阪神だがランナー二塁からの三盗は、そのうちたったの2つ(2企図2成功)だけ。明らかに「普段通りではない」盗塁を決めた近本本人は「(モーションを)盗めていたからセーフになりました。『行っちゃえ!』って行きました」と〝してやったりの表情〟を浮かべる。
この盗塁が近本単独の判断だったのか、それともベンチからのサインだったのかは、情報管理を重んじる藤川阪神において当然明かされることはない。
だが虎指揮官は、リーグ制覇を決めた9月7日(広島戦・甲子園)の夜に「この143試合はペナントレースという競技。CSは別のステージになる」と優勝監督インタビューで明言。その後も何度となく「ペナントレースとポストシーズンの戦いは全くの別物」との認識を示し、レギュラーシーズンの長距離走とポストシーズンの短距離走の違いを明確に強調してきた。
再三、得点圏に走者を背負いながら5回を無失点に封じた先発・村上を早めに降板させ、6~8回を及川&石井の2投手にイニングをまたがせながらつないだ継投策も、シーズン中にはほとんどないパターン。だが12球団最強の左右セットアッパーはベイ打線をシャットアウトし、自身のミッションを遂行した。
今や〝普通ではない〟ことも〝普通に〟成し遂げられるようになった藤川阪神。近本の三塁へのスプリントこそが、虎が「短距離走」にも強いことを証明しているかのようだった。













