オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第250回は「たまご婆」だ。
夜中に寝ていると天井の板が外れ、突然、老婆が顔を出す。そして、老婆は、手に持った生卵をそこにいる人間に投げつける。寝ていた人間は、突如、生卵まみれにされ驚くが、妖怪「たまご婆」はすでに姿を消しているという。
この妖怪を初めて文章にした時は、ちょうどサッカー日本代表の監督をジーコが務めており、負けが込んでいたので、ファンが怒って、“ジーコ生卵投げつけ事件”が発生した。その衝撃が子供たちの心に影響を与えて、この妖怪が成立したのではないかと推論した。今になって考えると、ちょっと違うのかもしれない。
卵関係の妖怪と言えば、伝承妖怪で「卵売り婆」を連想してしまう。これは、大蛇に変身した卵売り婆と戦う話であるが、妖怪自体が卵を凶器に使うわけでもなく、ただ単にその老婆の職業が卵売りだっただけである。
他には「卵の幽霊」という戦争中の怪談が千葉県佐倉市に伝承されている。これは、仕事ができない兵隊が唯一、食事に出る卵を楽しみにしていた。結局、厳しい訓練によりいじめ殺された兵隊の幽霊が「卵ー」と叫びながら隊の中を馬に乗って、駆け抜けるという幽霊談である。
考えてみれば、卵というのは生命のスタートである。死を連想する幽霊や妖怪と真逆の存在だ。そういう意味で、妖怪のモチーフになりづらい存在なのかもしれない。












