【取材の裏側 現場ノート】当社で働く記者として〝猪木ポーズ〟は見逃すわけにいかなかった。

 第107回全国高校野球選手権愛知大会決勝戦(27日、岡崎レッドダイヤモンドスタジアム)、豊橋中央のエース・高橋大喜地(だいきち)投手(3年)は、私学4強の一角・東邦を相手に延長11回、149球で完投。ピンチの場面では「燃える闘魂」故アントニオ猪木さん(享年79)のモノマネで気持ちを整え、要所を締めた。チームもタイブレークの末に6―5で勝利。初の甲子園出場を決めると、小学校時代からバッテリーを組む松井蓮太朗捕手(3年)らと喜びを分かち合った。

 高橋、松井を含むスタメン5選手が中学時代に所属していた愛知豊橋ボーイズは、記者も青春を過ごした思い出のチーム。当時コーチだった高橋の父・勝由さんからは内野手としてのいろはを学び、卒団後は勝由さんが経営する「すし龍」でおいしいご飯とお酒を堪能させてもらったこともあった。

中学時代に愛知豊橋ボーイズでもバッテリーを組んでいた松井蓮太朗(左)と高橋大喜地
中学時代に愛知豊橋ボーイズでもバッテリーを組んでいた松井蓮太朗(左)と高橋大喜地

「すし龍」では当時小学生だった高橋が、テレビで野球観戦をしていた姿を今も覚えている。月日は流れ、あの時の少年が堂々たる投球でライバルを次々と撃破。〝猪木ポーズ〟と東邦の応援歌を口ずさみながら躍動する姿は、高校野球ファンを中心に話題となった。

 あのメンタルの強さはどこから来るのか――。勝由さんに聞いてみると「それは高橋家の血筋だよ。俺も目立ちたがり屋だったし。大喜地は小さい頃から強い相手だと燃えていたし、人に見られる方が力を発揮するタイプだった」と笑う。勝由さんの母校・愛工大名電などからの誘いを断り、勝由さんと親交の深い萩本将光監督と「中央に行って甲子園に行く」と約束し、豊橋市の高校として74年ぶりの夢切符を勝ち取った。

 ピンチの〝猪木ポーズ〟は萩本監督のアイデアがきっかけ。選手以上にパワフルな指揮官が授けた活力剤は、エースに大きな力をもたらした。

 次なる戦いは5日に開幕する甲子園。勝由さんは「甲子園は観客が多いし、愛知大会以上にはじけると思うよ。むしろ調子に乗りすぎちゃうくらいにね。体も痛いところはないみたいだし」とニヤリ。高橋大喜地の名が日本中にとどろく日はもう間もなくだ。

(運動部・中西崇太)