阪神は2日の巨人戦(甲子園)に1―0で競り勝ち4連勝。今季の対巨人戦成績を10勝4敗とし、首位の座を守った。

 文字通りの〝紙一重〟の攻防だった。大竹―井上のTG先発投手が好投し、ゲームは終盤まで0―0のスコアレス展開。戦局が大きく動いたのは、延長戦突入の予感が漂いだした8回の阪神の攻撃だった。

 先頭の近本→中野が凡退し二死無走者となったが、ここから森下と佐藤輝が連続して四球を選び一、二塁のチャンスが到来。押せ押せのムードの中、打席に入った大山はGの3番手投手・田中瑛の投じた初球のシュートを振りにいったが、当たりはボテボテの遊撃ほぼ正面。3アウトチェンジを予感した気の早い虎党たちは既にこの瞬間、タメ息をついた。

 だが、捕球直前に打球がイレギュラーしてしまったことで、遊撃を守っていた泉口はこの当たりをファンブル。二走・森下はここぞとばかりに生還を目指し、本塁へ一気に突入。目の前に転がってきた白球を拾い上げた二塁・吉川は、すぐさまホームへ送球する。

 クロスプレーのタイミングはほぼ同着。だが、スライディングの体勢を崩してしまった森下は、本塁に触れることができずオーバーラン。タッチアウトを狙った相手捕手・甲斐のグラブも森下には届かない。

 森下は再度、本塁を触ろうとするも、甲斐も必死に左手を伸ばす。両者の体が本塁上でねじれてもつれあう形になったが、山本球審はアウトと判定。森下も一度は落胆した表情で、自軍ベンチへ引き揚げた。

 だがここで藤川監督がリクエストを要求するとリプレー映像で甲斐のグラブが森下に触れていなかったことが判明。判定はセーフに覆り、この日唯一の得点がスコアボードに刻まれた。

 絶妙なボディーコントロールでタッチをかいくぐった森下は試合後、一連の〝ニンジャ生還〟を「自分でも本塁にタッチできていたか、できていなかったのか分からなかったので。(タッチをかいくぐった動きは)とっさの判断でなんとか。一瞬で必死だったのでホームベースに触れることだけを意識した」と振り返る。

 泉口のファンブルは「見えていなかった」とのことだが「(三塁コーチャーの)田中コーチが腕を回しているのが見えた」ため、必死のパッチで本塁へ突っ込めたという。混沌と落胆と歓喜と安堵がごちゃ混ぜになって訪れた一幕だった。

 森下は、自身の全ての野球人生を振り返った上でも「あんなホームクロスプレーは(経験したことが)なかった」と語る。試合後会見に臨んだ藤川監督は「こちらによい判定に覆ったということでしょうね。リクエストは私がするので最終責任は私です」と終始冷静にコメントした。