プロレス史上最高の成功をつかんだユニットといえば「nWo」で間違いないだろう。日本でも蝶野正洋が「nWoジャパン」を結成。ロゴの入った黒いTシャツは世界各地で大ヒットした。米ニュースサイト「TMZスポーツ」は謎に包まれていたロゴの製作者について報じ、話題になっている。

「ニュー・ワールド・オーダー」は1996年に米WCWで結成された。オリジナルメンバーはハルク・ホーガンとジ・アウトサイダーズ(ケビン・ナッシュ&スコット・ホール)で、プロレス界に「新世界秩序」を打ち立てた。黒をイメージカラーとして、悪党に転向したホーガン人気も加わって大ブレーク。なぜかNBAスター選手のデニス・ロッドマンまで加入し、90年代後半に空前の人気を得た。

 人気の象徴となったのがTシャツだ。黒地に「nWo」「New World Order」の白い文字が入ったシンプルなものだが、プロレスファン以外にも浸透。日本でも街中で「nWo」のTシャツを来て歩く若者がいたほどだ。ジャーナリストのマーク・ライモンディ氏は、nWоの歴史についてつづった新刊書「Say Hello To The Bad Guys」でロゴに関しても触れている。

「TMZスポーツ」のインタビューを受けたライモンディ氏によると、「ロゴを実際にデザインした人物は不明だった。約30年間、その人物が誰なのか誰も知らなかった」。だが同氏の念入りな取材の結果、ロゴの製作者が判明。現在はフロリダ州ウィンターパークで不動産エージェントを務める女性だという。

 女性は当時、ディズニーのMGMスタジオで働いていた。同スタジオを訪れたWCW関係者から、1時間でロゴを製作することを依頼され、「いいわよ」と答えて製作したという。女性と「nWo」ロゴの関わりはこの1時間だけ。「それが全てだった。そして彼女は、そのロゴがどれほど大きな影響を与えたのか、ほとんど気づかずに人生を送っていった」(ライモンディ氏)。実際に同氏は女性に取材した際、冒頭で「それでTシャツは何枚売れたの?」と聞かれたという。

 つまりnWоのTシャツが何十万枚も売れたにもかかわらず、ロゴ製作者は莫大な利益の一部すらも手にすることはなかったというのだ。ところが、製作者は現状に不満を抱いていないのだとか。ライモンディ氏は「彼女はそれを恨んでいない。大丈夫。一部のクリエーターにとって、それが現実だ。仕事をして、給与を受け取って、それで終わり。自分が生み出したものから収益を得られない。それが現実なんだ」と説明した。
 
 製作者の女性にとっては、息子がnWоのロゴを知ったとき「あのロゴは私がデザインしたのよ」と伝え、息子から自分の母親が「クールな存在」だと思われたことが、最大の〝利益〟だったようだ。