愛情たっぷりに愛弟子を送り出した――。ソフトバンク・山川穂高内野手(33)は13日の西武戦(京セラ)で、中押しの適時打を含む2安打1打点の活躍でチームの勝利に貢献。試合後、不動の4番はこう切り出した。「今日は僕の話じゃないでしょ? リチャードでしょ?」。
12日にトレードが成立し、巨人へ移籍したリチャード内野手(25)は唯一無二の愛弟子だった。13日の広島戦(マツダ)に「7番・三塁」でいきなりスタメン出場すると、5回の第2打席にあいさつ代わりの一発を叩き込み、鮮烈すぎる新天地デビュー。「リチャードが打つと、うれしいですよ。弟分みたいなものですから」。率直な思いだった。
リチャードの技術的、精神的弱点を誰よりも知っていた。なんとか花を開かせようと、リチャードが壁にぶつかるたびに、頭の中で何周も考えを巡らせてきた。時間をかけて見続けなければ分からない愛弟子の欠点を理解していた。ゆえに、周囲には前時代的と捉えられるアプローチを時には実践。そんな面倒見のいい師匠を、リチャードは心から慕っていた。
巨人へのトレードが発表される前夜、電話が鳴った。「球団から連絡がありました。そういうことだと思います」(リチャード)。返した言葉は短く「そういうことだろうな。分かった。お疲れさま」。わずか数秒のやり取りだった。
「構うと寄ってくるんでね。突き放さないと。ああいうタイプは…」。リチャードのプロ1年目のオフから師弟関係は始まった。「自主トレでも1回目の後は『もう来るな』って、ずっと言ってきたんです。なのに、来る。かわいいんだけど、そこがダメ。まあ〝そういう人〟なんですよ」。
どれだけ厳しく接して、つらく突き放しても離れなかった愛弟子。同じチームで大成させてやりたいという気持ちが強かった分、語られる言葉は感傷的だった。
真剣に向き合い続けてきた7年間をこう振り返る。「優しいんですよ、あいつ。ほんとに優しいんです。そこが良さなんですけどね。プロ野球選手にとっては弱点にもなるんです」。
生き馬の目を抜く世界。チームの内外で四六時中、闘いがある。一軍で結果を出すために、性格的な弱点を克服するアプローチをあの手この手で伝えてきた。「性格を変えることはできない。だけど、作らないといけない。性格を」。
師匠も、環境が劇的に変わることで「自立」が促されることを好機と捉えている。「自分の生きざまというか、僕はこの世界で生きていくんだっていう信念みたいなものを持ってほしい」。ちょっと打っただけでは褒めない。向けられる厳しい視線は変わらない。












