水面下で先に動いていたのは――。ソフトバンクと巨人の間で成立した1対2の交換トレードで「ロマン砲」リチャード内野手(25)が新天地に渡った。さまざまな思惑が交錯するトレードの〝深層〟を探ると、意外な動きが明らかとなった。

リチャードを送り出す代わりに巨人から秋広、大江の2人を獲得した今回のトレード。ソフトバンクの城島健司チーフベースボールオフィサー(CBO=48)は13日に「ジャイアンツさんからリチャード選手をどうしても獲得したいという話があった」と経緯を端的に説明した上で、新戦力となった2選手に「必要な選手で、活躍してくれるだろうという選手。すごく期待している」と力強くエールを送った。

 昨季までウエスタン・リーグで5年連続本塁打王のリチャード内野手はホークス在籍時、幾度も他球団からトレードの打診を受けてきた。これまではその都度、門前払いにしてきた有望株。それだけに、放出に踏み切ったインパクトは大きかった。

 だが、潮目は確かに変わっていた。負傷で出遅れた栗原の代役で開幕スタメンをつかむも、わずか6試合で二軍降格。支配下昇格から5年が経過し、球団はここで一定の区切りをつけた。

 トレードはフロントの完全主導案件だ。城島CBOが編成トップ就任を前提に実権を握り始めて以降、1年半の間に今回が4件目のトレード成立。「ウチは130人以上の選手を抱えている。ウチだけポジションが15個あればいいが、9個しかない。ヨソで9人の中に入ったり、ベンチ入りできる選手がいるのなら、そのニーズに応えないといけない。ウチだけで囲い込んでいても、いっぱい保有している意味はない。そういう意味でトレードはどんどんやっていく」(城島CBO)。新たな方針が、リチャード放出という〝聖域〟を取っ払った。

 ホークスの意思で市場に出れば、あとは縁とタイミングだけだ。シーズン中の同一リーグへのトレードは非現実的。となれば、セ・リーグ球団との〝縁結び〟となる。

 そうした中、今月6日に巨人が悲劇に見舞われた。不動の4番・岡本が左ヒジの靱帯損傷で長期離脱。両球団間で水面下で進められていた話は一気に動いた。岡本の穴を埋める強打の内野手補強が急務となった巨人から有望株・秋広に加えて中継ぎ左腕・大江も加えた「1対2」の打診を受けた。思いもよらない〝格差トレード〟は、時間を置かずに決着した。

 リチャードの移籍について、小久保監督がこの日初めてこう言及した。「(巨人に)熱望されて行くわけだから、チャンスももらえる。環境を変えるのが一番いい。球団もそう判断したんだと思います」。さっそく広島戦(マツダ)に先発出場したリチャードは、第2打席であいさつ代わりの一発を放った。トレードが正解だったかどうかは、当事者が新天地で活躍できるかにかかっている。温かい目で送り出された男の恩返しが始まった。