ソフトバンク・嶺井博希捕手(33)が11日のオリックス戦(京セラ)で、全得点を叩き出す獅子奮迅の活躍で7―1の快勝に導いた。プロ初の1試合2発、移籍後初の猛打賞に好リードと大暴れ。球団の福岡移転後5000試合目となる節目の一戦を完勝に導く立役者だった。

 まずは2回、左中間へ主導権を握る先制2ランを放ち、先発・上沢を勇気づけた。第2打席は追加点が欲しい1点リードの4回無死一、二塁。小久保監督に犠打の選択肢はなかった。「全然よぎらなかった。もともと打撃がいい。主力が抜けて、スタメンの回数を増やしていくというのが一つの策だった」。出番が増えたのは得点力を期待されてのこと。以心伝心で振り抜いた打球は、左翼ポール際に飛び込んだ。

 8回には中堅フェンスを直撃するダメ押しの2点適時二塁打。キャリア最多7打点に「(地元)沖縄で話のネタにでもなってくれればいい」と笑った。

 リードでは内角を突く配球で上沢を8回無四球、1失点の好投に導いた。母の日の大活躍――。「昔はよく怒られました」。厳しく育ててくれた母の教えは、チームプレーや献身性を重んじる野球というスポーツを生業にする中で生かされている。投手陣とのクッション役を買って出たり、聞き上手で嫌味のない言動がチームを和ませる。選手やチームスタッフが口を揃えるのが「人柄の良さ」。努力が報われることを願う声がどこからともなく聞こえてくる稀有な選手だ。

 この日2度訪れたセレブレーションにナインの〝嶺井愛〟が詰まっていた。試合後、小久保監督は自ら切り出す形で「嶺井が打つと、山川が一番喜んでますね」と内情を明かした。

 「すごく刺激を受けたし、自分のことのようにうれしかったです」と語ったのは山川穂高内野手(33)。「(同郷で)小5の時から知ってますから」。誰よりも人柄を熟知している。大学日本代表で再会を果たし、プロ入り後も異なるリーグ、異なるチーム(山川=西武、嶺井=DeNA)ながら頻繁に食事に出かけるなど公私で欠かせない存在となった。

 盟友は仲間に愛され、応援される理由を知っている。「謙虚すぎるくらい謙虚。嫌いな人はいない」(山川)。嶺井は2022年オフにFA加入。23年は44試合に出場するも昨季はわずか4試合の出場にとどまった。運命に導かれるように九州唯一の球団で共闘することが叶った山川は、嶺井の真価を再確認した。

 「去年(一軍の)試合に出ていない時も、まったく腐ることなく二軍でも、三軍でもやっていた。どこにいても同じ姿勢。だから個人的に嶺井が活躍するとうれしいんです」

 心配になるくらい人が良く、優しい。生き馬の目を抜く世界で、まさに稀有な存在だ。3本塁打、12打点はともにチーム内で山川に次ぐ成績。強みを生かして、正捕手不在の転換期にあるチームを支えている。