「ミスター女子プロレス」が伝説バトルの“裏舞台”を語った。昨年10月に還暦を迎えたLLPW―Xの神取忍(60)が本紙連載「The Rankig」(随時掲載)でキャリア3番勝負を選出。2000年7月に「ミスタープロレス」と呼ばれた天龍源一郎との戦いに臨んだ一戦を、自身の歴代ベストバウトに選び、改めて四半世紀前の“恐怖体験”を告白した。

 約25年前、新たな戦いを欲していた神取は「ジャイアント馬場さんとアントニオ猪木さんに勝った人は、天龍さんしかいない」として男子トップレスラーに対戦を直訴。「絶対に勝てないと分かっているんだけど、柔道をやっていたので(練習などで)男子と組み合うこともあって、特に違和感はなかったし、戦うことに怖さはなかった」という。

 ただ、対戦直前に自身の感情に大きな“異変”を感じたという。「天龍さんのオーラを感じた。入場シーンや対峙するときの雰囲気とか。初めて“怖い”って感じたね。柔道時代も女子レスラーと対戦するときも感じたことがない恐怖というか、圧迫感でね」。結果はご存じの通り。サッカーボールキックで背中を蹴られて悶絶すると、手加減なしのグーパンチで顔面を殴打された。

天龍のキックが顔面にヒット
天龍のキックが顔面にヒット

「もうボコボコ。顔面が腫れ上がって大変なことになっていたけど…。試合が終わり、帽子をかぶって帰ろうとしたんだけど、帽子が頭に入らないんだよね。頭までが腫れていて」と明かすように、かなり膨れ上がっていたという。脳が腫れるほどの深刻なダメージがあったとみられており、かなり危険な状態だった模様。だがそこはミスター女子プロレス、幸いにも大事には至らなかった。

顔面が変形した神取。頭部もダメージを受けた
顔面が変形した神取。頭部もダメージを受けた

 神取は「顔も腫れて頭も腫れて。あそこまでボコボコにされると、もう怖いものがなくなる。そのあとに試合で緊張感はあるんだけど、怖さとかそういう気持ちはまったくなくなった。いつでも平常心で臨めるようになったかな」。その後のレスラー人生で、大きな転機になった一戦だったようだ。

 第2位には1994年7月、ブル中野とのチェーンデスマッチを挙げた。「ブルが金網デスマッチ(90年11月、対アジャコング)で4メートルの高さから飛んだ試合を見て。当時プロとして唯一、認めていた選手。看板を背負っていて、自分の中で“やってみたい”と…」。チェーンを手に巻いたブルのパンチを受けた神取は大流血し、反撃を受けたブルの顔面も鮮血で染まった。「名勝負が生まれた、常識を覆した試合だったね。今でもすごく高い評価をもらっているんで」と激闘を振り返った。

 第3位には、93年4月に実施された北斗晶戦を選んだ。4団体(全女、LLPW、JWP、FMW)による女子オールスター戦で実現した時間無制限の完全決着ルール。何でもありの壮絶バトルに、神取は「見ている人たちも盛り上がっていたし、この試合が『1番だよね』っていう人が多いんだけど、自分の中では3番目かな。変わったスタイルの試合ではなかったし、ケンカファイトも散々やってきたから」と語っている。

 還暦を過ぎても、新しいことにチャレンジする姿勢は貫いている。女子レスラーでは63歳になったジャガー横田、64歳のダンプ松本と“先輩”たちもまだまだ血気盛ん。神取は「還暦ごときで胸張れないよ」と宣言。さらなる挑戦に挑んでいく構えだ。