いったい何があったのか。全日本プロレス30日の大田区大会で、最大のサプライズとなったのが安齊勇馬(24)の3冠ヘビー級王座戴冠だ。

 メインで行われた王者・中嶋勝彦(36)との一戦は、残酷なまでに一方的な展開となった。5分過ぎから安齊は防戦一方。強烈な蹴りの前になすすべなく、グロッギー状態となった。それでも19分過ぎ、この試合3発目のジャンピングニーを発射。すかさずジャーマンを決め、これで3カウントが入った。

中嶋(左)にジャンピングニーを放つ安齊
中嶋(左)にジャンピングニーを放つ安齊

 唐突な幕切れに会場内は騒然。あっけに取られた表情の中嶋は、何ごともなかったかのようにリングを後にすると、そのままコメントスペースに現れることなく、会場を後にした。

 この試合を見た〝マット界一の偏屈者〟こと鈴木秀樹(44)は、「安齊勇馬が勝ったから、安齊勇馬が強かったのでしょう。プロレスのルール上、ワン、ツー、スリーが入れば勝つのは当たり前ですけど」。試合開始直後に2発、終盤にカウンターで決めたジャンピングニーが勝敗のカギになったと指摘する。

「要所要所で当たっていたし、的確にとらえていたんじゃないですか。最後のジャンピングニーもきっちり入っていたし。試合全体を見るとジャンピングニーへの対処が、中嶋はできていなかったんじゃないかな。敗因はそこじゃないかなと」

 安齊は中大レスリング部の先輩にあたる故ジャンボ鶴田さんが得意としたジャンピングニーを武器とする。196センチだった鶴田さんには及ばないが、安齊も188センチと高身長だ。

「あれだけの身長のある人間が高さを使って飛ぶと勢いもあるしスピード感もあるので、あれが効いていたんじゃないかと。どこかで一回効くと、普通に動いているつもりでも反応が遅くなったりするので」(鈴木)

 24歳10か月で3冠王座を初戴冠した安齊は、同王座の史上最年少戴冠記録を樹立。「泥くさい試合かもしれないし、偶然の大金星かもしれないけど、みんなとの約束を守れてよかったです」とマイクアピールしたが、一部からブーイングが起きたのも事実だ。

 鈴木は「プロレスの難しいところは、お客さんを納得して帰すこと。その納得というのが喜ぶ納得なのか怒りなのか、喜怒哀楽を持たせることをやらなきゃいけなくて、いまだに僕もできているかどうかわからないから続けているんでしょうけど。そういう(納得しない)お客さんの声があったなら、そういう試合だったんじゃないですかね」としつつ、「お客さんが答えを持っていますから。選手がどうこうじゃなくて。お客さんが受け入れなければ、ダメですよね。例えば今日のセミだと(ジュン&レイの)斉藤ブラザーズ、その前だとライジングHAYATO選手にお客さんの支持がある。そういうのを味方につけるのも、強さのうちですからね。お客さんの評価も強さのうち」と指摘。安齊にとって今後の課題となりそうだ。

 この日は珍しく真面目に語った鈴木だが、自身は諏訪魔との「バカバカコンビ」で臨んだ世界タッグの初防衛戦で斉藤ブラザーズに敗れ、王座から陥落。突然、相棒への怒りが再燃したようで「ふざけんな、バカヤロー。この尻軽男が! エボリューションをやめてブードゥー(マーダーズ)に行って、ブードゥーをやめてエボリューションに戻ってとか、いいかげんにしろ! まずラーメンをおごれ。そうしたら話を聞いてやる!」と吐き捨て、一人でJR蒲田駅近辺のラーメン屋に向かった。