卓球女子の平野美宇(23=木下グループ)は、細い細い〝1本の糸〟をたぐり寄せた。

 小さい頃から憧れの舞台だった五輪が目標に変わったのは、補欠として同行した2016年リオデジャネイロ五輪後だった。「(補欠の)4番目で経験した時に『うらやましい』『自分のこう目標にしたい』と本気で思った。そこからシングルスの2枠を目指して頑張ってきた」と心境が変化したが、現実は甘くなかった。

 翌年の全日本選手権を史上最年少となる16歳9か月で制するなど、21年東京五輪のシングルス代表に名乗りを上げたが、石川佳純氏(30)との争いに敗れ、東京五輪は団体戦のみの出場だった。「東京の時は本当に苦しくて、卓球から本当に逃げたいって毎日思っていた」。苦しい日々を過ごした一方で、自分の甘さにも気がついた。

 24年パリ五輪選考レースの序盤は、思うような結果を残せず「最初は廊下などで大泣きしている恥ずかしい姿を見せたが、これではダメだと思った」。覚悟を決めた平野は22年11月の全農カップ船橋大会を制すると、23年もコンスタントに結果を残した。選考ランキング2位で迎えた全日本選手権5日目(26日、東京体育館)では順当に8強入り。その一方で選考ランキング3位の伊藤美誠(23=スターツ)が6回戦で敗退したこともあり、念願のシングルス代表切符が平野の手に渡った。

 何度も壁にぶつかり、何度も涙を流してきた。多くの経験を積んだからこそ、伝えたい思いがある。

「(リオ五倫の)リザーブだったり、前回の(東京五輪のシングルス代表争い)ところで負けたりとか、何回も何回もギリギリのところで落ちてきた自分でも、こうやってあきらめずに根性でやれば、目標だったり夢はかなうかも、と思ってもらえるような存在になれたら」

 次なる目標は「シングルスに出場するからには必ずメダルを取りたい。団体でもメダル、そしてやっぱり金メダルを。五輪の舞台で中国選手に勝ちたい」と力強く宣言。世界を驚かす平野の逆襲劇がついに幕を開けた。