阪神は25日の中日戦(バンテリン)に1―2で敗戦。先発・村上は5回5安打2失点で敗戦投手となったものの、防御率1・75でシーズン規定投球回数に到達し、最優秀防御率のタイトル獲得をほぼ確実にした。

 今季の阪神は村上以外にも大竹、木浪などの長く二軍に埋もれていた戦力が、投打で〝バズった〟ことが18年ぶりとなるリーグ制覇に直結した。だが、ほかにも忘れてはならない「バズ体質男」が存在する。質量豊かな虎ブルペン陣の中で、あっという間にエースセットアッパー格にまでのし上がった大卒2年目左腕・桐敷拓馬投手(24)だ。

 今夏から中継ぎに配置転換された桐敷は25試合に登板して防御率1・88、12ホールドをマークしている。ストライクゾーンの四隅を突く抜群の制球力と豊富な変化球の数々。そして「球速以上に伸びを感じさせる」と評される力強い直球を武器とし、岡田監督は「スペードのエース(最強の切り札)やろ。今は」と全幅の信頼を置き、重要な場面を託し続けている。

 しかし実はこの男、全くの無名選手だった本庄東高(埼玉)3年時に〝世界レベル〟で注目を集めたことがある。夏の県大会・市川口戦。4―3で1点をリードして迎えた延長11回二死二塁の場面で〝事件〟は起きた。

 一打同点のピンチ。それでも勝利まで「あと1人」の状況にまでたどり着いたマウンド上の桐敷は、相手打者を見事に投ゴロで打ち取った…かに思われた。ところが、グラブにボールが挟まったまま、どうしても抜くことができない。とっさの機転を利かせ、桐敷は球が挟まったままのグラブごと一塁手に〝送球〟したが、打者走者も懸命のヘッドスライディングを敢行して判定はセーフ。その間に二塁走者が本塁を陥れ、4―4の同点に追いつかれてしまったのだ。

 一連の超珍プレーは動画投稿サイトにいつの間にやらアップされることに…。6年の時を経た今、再生回数は1100万回を優に超えている。

 試合そのものは続く12回に本庄東が勝ち越し点を挙げて勝利。とはいえ、当の桐敷はルーキーイヤーの昨季「あの時はもう本当に恥ずかしくて恥ずかしくて…。周りからも随分とネタにされてイジられました。せっかくプロ野球選手になれたわけですから、これからはいい意味で本業の野球でバズりたいんです」と誓いを立てていた。

 苦い過去も経験し、一気に頭角を現したプロ2年目の秋。次なる戦いはCS、そしてその先に待つ日本シリーズだ。「江夏の21球」として知られる1979年の日本シリーズ(広島対近鉄)に代表されるように、ポストシーズンでは優れたリリーフ投手が何度も短期決戦の流れを変えてきた。バズ体質男・桐敷はどのような形で脚光を浴びるのだろうか。今から興味が尽きない。