これこそエースの男気だ。巨人が23日のヤクルト戦(東京ドーム)で先発予定だったグリフィンが試合前に負傷。スクランブル登板を志願した菅野智之投手(33)が7回3失点と粘り、チームは延長11回の末に4―3でサヨナラ勝ち。DeNAと入れ替わりで3位に浮上した。投手陣の大黒柱が自ら代役を買って出た裏には秘められた思いもあったようだ。

 頼りの男が動いた。この日先発予定だったグリフィンは試合前の練習中に打球がネット越しに頭頂部右側を直撃。診察の結果「頭部打撲」と診断され、急きょ代役が必要となった。

 そんな中、チームの危機を救うべく先発マウンドに上がったのが菅野だった。「僕はもう準備できているので、投げさせてください」と首脳陣に直訴。7回107球を投げて3失点と先発の役目を果たすと裏の攻撃で打線が追いつき、最後は延長11回二死一塁から梶谷の内野安打が悪送球を誘い、サヨナラ勝ちにつながった。

 これには原監督も「智之本人が『行ける』というところで、だったら行ってもらおうということで決めました。投球そのものは非常に上がっていると思います」と評価。菅野も「もうちょっと締まった投球ができると良かったですけど」としつつも「自分の仕事は全うしたと思っているので。良かったと思います」と手応えも口にした。

 今回のようなケースでは、ブルペンデーとして救援陣で1試合を乗り切るのが一般的。この日も当初は救援陣が一丸となって乗り切るプランも浮上していたが、投手陣の大将格である菅野が登板日を1日前倒しすることで問題を解消した。

 実績最上位の投手による志願のスクランブル登板。右腕をそこまで突き動かした要因は何なのか? あるチーム関係者は菅野の心境をこう分析した。

「智之も昨年、一昨年とコンディション不良で先発予定をスキップして後輩投手たちに迷惑をかけてきた。普段は表向きは強がったり明るく振る舞ったりはしていても、負い目は相当感じていたはず。どこかで絶対に借りを返さなくちゃいけないという気持ちが、この日の志願につながったのではないか」

 これまで巨人のエースとしてチームを引っ張ってきた菅野だが、ここ数年は思うような結果が出せずにいた。それでも決して弱音を吐くことなく「エースのプライド」を貫き通してきた。

 この日の決断についても菅野は「絶対誰かが行かないといけない状況だったので。僕の中で迷いとかはあんまりなくて、体が動かされたって感じですかね」とひょうひょうとした様子で舞台裏を明かした。マウンドの借りはマウンドで返す――。弱さを見せない男が、自らの腕で「恩返し」を果たした。