第105回全国高校野球選手権大会(甲子園)第11日は17日に3回戦が行われ、第2試合は花巻東(岩手)が智弁学園(奈良)を5―2で下した。打線が16安打と活発な中で、背中を痛めて調整が遅れていた佐々木麟太郎内野手(3年)も聖地をどよめかせる痛烈な打球を連発して3安打1打点の活躍。高校通算140本塁打を誇るスラッガーのエンジンがようやくかかってきた。主砲にたしかな復調傾向が現れ、10年ぶりの8強入りで悲願の初優勝へ勢いを増す花巻東。チーム力の高さを物語るエピソードがあった――。
 
 強打の智弁学園を相手に、攻撃陣が打ち負けなかった。3番・佐々木麟、4番・北条、5番・千葉の中軸3人がそれぞれ猛打賞をマークして、計10安打のそろい踏み。次戦に大きく弾みをつける会心の勝利だった。

打席で吠える佐々木麟太郎
打席で吠える佐々木麟太郎

 準々決勝は連覇を狙う仙台育英(宮城)との東北勢対決。佐々木麟は「自分たちも日本一を目指してやってきた。甲子園で東北勢と戦えることはワクワクする。チームも勢いがついてきたし、自分自身もベストを尽くして楽しんでプレーしたい」と高ぶる思いを隠せなかった。

 悲願の初優勝まで、あと3勝。高校球界屈指の長距離砲を擁し、戦術理解度の高い選手がそろう。菊池雄星投手(ブルージェイズ)、大谷翔平投手(エンゼルス)の恩師・佐々木洋監督率いる精鋭部隊はかねて統率が取れている。息詰まる攻防の中で求められる高い集中力や相手の意表を突く想像力、危機察知能力といった勝負どころで試される「力」は決してグラウンドの中だけで養われるわけではない、との考えが花巻東には伝統的にある。

「日々の生活からの高い意識の積み重ね、訓練が一球や一瞬に結果となって現れる」(チーム関係者)

 全国各地に遠征などで出向いた際、現地で驚かれるナインの行動がある。送迎バスに乗車する際、入り口付近で立ち止まると素早く靴を脱ぎ、底についた土やごみを丁寧に払って次々に乗り込んでいく。土足禁止、かつてヤン車で多く見受けられた〝土禁〟の習慣だ。

「バス会社の運転手さんが驚いて、慌てて靴を履いたままの乗車を促されるので、場合によってはそのまま乗る時もありますが、天気が悪かったり、靴が汚れている時は土足では上がらないようにしています」(学校関係者)

 対外的な〝ポーズ〟でやっているわけではない。普段の生活の延長線上でとっさに出る行動だという。現3年生の入学と時を合わせるように、3年前に学校から野球部専用のバスが用意された。深い感謝の表れと同時に、ナインはピカピカの状態でバスを後輩に譲り渡すため、清潔に使用する意識と行動が自然発生的に生まれた。

「普段の生活の中での気づきや周囲への気遣いは、小さなことであってもグラウンドの結果に反映される。佐々木監督が常に言っていることに通じる」(野球部関係者)

 決してポーズではなく、本気の行動の積み重ねが最後の夏、結果にはね返っている。集大成となる甲子園を「自分のことや、自分の将来のことは捨てて、勝てばいい」とも言い切った佐々木麟。花巻東の躍進が続く――。