〝平成生まれの昭和男〟が令和の聖地に登場だ。第105回全国高校野球選手権大会第4日(9日、甲子園球場)、第2試合で日大三(西東京)が3―0で社(兵庫)に快勝。あの400勝投手から〝投手の基本〟を学んだエース右腕・安田虎汰郎(3年)が2安打完封の快投でチームを4強入りした2018年以来の初戦突破に導いた。
日大三のエース安田は9回106球で相手打線を2安打に封じ、今大会初の完封勝利をマーク。「公式戦の完封勝利が初めてで、それが甲子園でできてうれしい」と笑顔で汗を拭った。2011年夏の優勝投手、吉永健太朗さんから1月に教わったというチェンジアップがさえ渡り、5回二死までパーフェクト投球。唯一のピンチだった7回二死二塁も「思い切って腕を振った」と左打者の外角低めに投げ込み、空振り三振で切り抜けた。
そんな頼もしいエース右腕はチーム内でも〝異色キャラ〟として際立っている。昨今の球児が憧れる大谷翔平(エンゼルス)や千賀滉大(メッツ)、山本由伸(オリックス)、佐々木朗希(ロッテ)といった投手には関心を示さず、昭和のレジェンドにぞっこん。小学5年時に参加した野球教室でプロ通算400勝の金田正一氏にアドバイスを求めたところ「走れー!」とだけ返され、以後は誰よりも走り込みを大切にし、足腰の鍛錬に励んだという。
「昔の投手の果敢に打者に立ち向かっていく姿にすごく美しさを感じる。村山実さんの闘志、小山正明さん、稲尾和久さんのコントロール、これが僕の完成形というか、憧れです」。すらすらと出てくる名前は昭和のプロ野球を彩った名投手ばかり。お気に入りの動画は「村山実さんが長嶋茂雄さんから1500個目の三振を取った時のシーンが好きですね」と声を弾ませる。
ある選手によると「安田は大谷選手とか全然興味がない。WBCでみんながワーッとなっていたときでも、あまりピンときていなかった。正直、変わり者です。入寮したときも自己紹介で『歴代の総理大臣を全員言えるから』と本当にそれを言い始めた」そうだ。
普段は寮生活だが、実家のある千葉・鴨川市に帰省した際は、伊勢エビ漁師の祖父・正二さんと一緒に船に乗って漁に出るという。幼少時から続けており、そこで網を上げるなどしたことで体幹や握力が鍛えられた部分もあるようだ。ナインの一人は「安田の実家から寮に伊勢エビやサザエの差し入れが届いたりして、みんなのモチベーションアップにもつながっています」と明かす。
「先発完投」が座右の銘で「今日は絶対一人で投げ抜くんだというつもりだった。任されたマウンドは最後まで守る。それが美学」と言い切る。試合前には「村山実さんが巨人戦で内角をドバーンと突いて、ボール判定に(不服で)審判を殴ろうと詰め寄った有名な話があるが、その動画を見て1球の重みを感じながら投げた」という筋金入りの名球会マニアが〝昭和の魂〟で全国制覇を目指す。












