プロ野球のオーナー会議が10日に東京都内で開かれ、米大リーグで今季から導入された「ピッチクロック」(投球間隔の時間制限)の導入の可否を含めた検討に入るよう、オーナー側がNPBに対して指示した。メジャーでは1試合平均で20分以上の時間短縮につながっているが、メリットばかりなのか? プロ野球より一足先に同ルールを導入した社会人野球のKMGホールディングス監督で、投手出身の本紙評論家・加藤伸一氏の見解は――。

 社会人野球では、プロ野球に先駆けて今年からピッチクロックを導入した。メジャーは走者なしの場合、投手は15秒以内で投球動作に入らなければならないのに対し、社会人野球は12秒。走者ありでは、どちらも20秒以内となっており、オーバーした場合はボールが宣告される(社会人野球は走者ありなら1回目は警告)。

 実際に社会人野球の監督として新ルールの下で試合を行っている加藤氏は「かねて走者なしでは12秒以内に投球しなければならないというルールでやってきましたが、選手たちは今年から導入されたピッチクロックに少なからず戸惑っています」という。東京ドームを舞台に14日から始まる都市対抗野球では残り秒数が表示されるクロックボードが計4台設置されるというが、地方球場で行われる試合ではクロックボードもなく、二塁塁審がストップウオッチでチェックするケースもあったという。

 もちろんNPBでピッチクロックを導入するとなれば、球場によって設備が異なるような心配は無用だろう。ただ、加藤氏は「時間を超過したとして最後に『ボール』を宣告するのは生身の人間である審判です。ルールはルールで大切ですが、厳格にやりすぎて見ている側も見られている側も勝負に入り込んでいるような大事な場面で『ボール』とやって球場全体がシラケてしまうようなことは避けてもらいたい」と訴える。

 現役時代に投手として活躍した加藤氏は「自分はテンポ良く投げるタイプでしたが、近鉄のローズと対戦する時などは意図的に焦らしていました。そういう間合いとか駆け引きがなくなってしまうのは少し寂しい気もします」と言う。

 一方で時短以外のメリットとして、伸び悩んでいる投手にとっては一皮むけるキッカケになる可能性があると指摘する。「コントロールに自信がない投手は、慎重になりすぎて投球間隔が長くなってしまう傾向があります。ピッチクロックの導入によってテンポの良さを覚えることで、投球そのものが良くなるケースは出てくるかもしれません」

 メジャー、社会人野球ではけん制球も制限された。走者がいる際に投手が離脱できるのは2回までで、3回目はセーフならボークが課せられる。メジャーではベースの拡大ともあいまって盗塁数が増えた。この点について加藤氏は「2球投げたら『次はない』と走りやすくなるからでしょう。逆に投げないことが走者に対するけん制になるかもしれません」との見解を示し、時短以外の〝野球の変化〟の可能性にも言及した。

 いずれにせよ、プロ野球にとって試合時間の短縮は長年の課題だった。加藤氏は「過去には新ストライクゾーンの導入などもありましたが、オープン戦が終わったら元に戻っていた。メジャーの真似をするだけでなく、現場の監督やコーチの意見も聞くなどして、最善の形でピッチクロックの導入につなげていただければ」と訴えた。