球宴選出〝御礼〟のプロ初完封劇だ。5日の広島戦(マツダ)を2―0で制した阪神で、先発・大竹耕太郎投手(28)がベストピッチで、チームに白星をもたらした。序盤から抜群の制球力と打者の手元で伸びる140キロ台の直球、宝刀・チェンジアップを駆使し赤ヘル打線に三塁すら踏ませず。5安打無四球、105球のプロ初完封に「7回とか8回に見るのとは違う景色を見ることができました」と独特の表現で充実感を漂わせた。

 昨オフ現役ドラフトで加入した左腕は試合前までに6勝の働きが評価され、監督推薦での初の球宴出場も決めた。プロ6年目でたどり着いた大舞台に「小さい時からテレビで見ていた。そういう舞台で投げられることは本当に光栄」と喜びもひとしお。キャリアの勲章を得たそんな節目の日にプロ初完封、5月27日以来の7勝目で防御率1・13はリーグトップに。その実力を改めて示した。

「球は遅いかもしれないですけど、自信なさげの150キロよりは、自信をもって投げる140キロのほうが僕が打ちにくいと思って投げている」

 試合後の本人が公言した直球と宝刀・チェンジアップは文字通り、今やセ球団関係者には〝魔球〟として脅威となっている。セ球団の在京スコアラーはそのワケをこう明かす。

「球種と球速で緩急をつけてくる投手はたくさんいる。でも大竹はプラス、マウンドと本塁までの距離でも〝緩急〟をつけてくる。打者が『何を狙ってるか?』の嗅覚、危険を察知する能力が魔術師なみに高い(笑い)。だからランナーがいなくても、クイックはもちろん、常に投球間隔や足の上げ方をいつも微妙に変えて、タイミングをずらしてくる。それでも球質は落とさず、四隅に制球してくるのが技術の高さなんだろうけど。最終的にはチェンジアップが邪魔なボールになるんだけど、それまでの直球、カット系で打者はかなりタイミングを狂わされているケースがほとんど」。マウンドから本塁までの18・44メートルにおいての空間を支配できる投球術と、打者の狙いを嗅ぎ分ける危険察知能力が人並み外れていると推測する。

 この日の対広島戦は3勝目と最も得意としているだけでなく、中日以外の全球団からすでに勝利を挙げている実力は、そんな投球術のたまものでもある。幻惑左腕の旋風は、まだまだ続きそうだ。