明るい兆しは見えてきた。阪神は19日の広島戦(甲子園)に6―1で快勝し、今季最多タイの貯金4で単独首位に返り咲いた。開幕から不振にあえぐ主砲・佐藤輝明内野手(23)は今季初タイムリーを含む2安打。ともに詰まらされた当たりだったが、今は結果こそが何よりの良薬だ。野球評論家で、プロ通算232本を誇る球団OBの柏原純一氏が、現役時代に初めて中軸を任されたときの自身の体験も踏まえ、背番号8の現状を徹底分析した。
【柏原純一「烈眼」】チームが首位にいるのは救いだろうが、その心境は容易に察することができる。試合前まで自分の身長にも満たない打率1割6分3厘、本塁打0の打点1と不振のどん底にあえいでいた5番・佐藤輝のことだ。
昔も今もクリーンアップの重責というのは経験した人間にしか分からない。比較しては失礼かもしれないが、1970年代後半、野村克也さん、門田博光さんのいた南海で初めて4番を任された時のことを思い出した。自分の体験で「何が他の打順と違ったか」と言えば、やたら背中から「誰か」の声が聞こえてくるような感覚になったことだ。それまで気にもとめなかった周囲の声が、実際はそうでなくても「自分のことでは?」と敏感になった記憶がある。この感覚に特効薬はない。「そういうもの」と慣れていくことが中軸を打つ人間の宿命でもある。
とはいえ、そういった負の精神状態は厄介なことに、プレーにも出やすい。この日はネクストバッターズサークルで素振りをしている段階から佐藤輝の一挙手一投足を追った。まずは結果うんぬんではなく、そこに至るまでのプロセスを知りたかったからだ。見たところ、4打席全てで、しっかりと事前に投手のタイミングを測り、腰の入ったいいスイングをしていて安心した。準備段階でどう打つかのイメージができていないのは論外だが、それはしっかりとできている。
あとはいかに実際の打席で再現できるかだ。現実には、まだ〝迷い〟が出ている。2回の第1打席は如実だった。初球に内角の変化球でストライクをとられ、2球目は内角直球のボール球を空振り。続く外のボール球にもバットが止まらず3球三振を喫した。相手バッテリーとの駆け引きで、完全に「後手」に回っていた。
その後の2打席で出た2安打は、いずれも本来の打球とはいい切れないもの。それでも自分とチームの「結果」に結びついた。この成功体験は、今後の試合の向き合い方にもつながるだろう。
もちろん、まだ課題はある。今後は相手投手を「どう仕留めるか」をより細分化し、整理して臨んでほしい。言い換えれば、自分自身の考えに決着をつけてから打席に入れるか否かということでもある。腹をくくることで中途半端にボール球を振る機会は減り、自分のスイングもできるようになる。そうなれば、目の覚めるような一撃でチームを勝利に導く機会も確実に増えるはずだ。
(野球評論家)












