【取材の裏側 現場ノート】 昨年10月1日に亡くなったアントニオ猪木さん(享年79)が、叙位・叙勲を受けた。「従四位」と「旭日中綬章」で日本のプロレスラーとしては初の叙勲となった。
23日には遺族を代表して、実弟の猪木啓介氏と孫の寛太氏が拝受する予定。プロレス界としても喜びに包まれているが、一方でどこかすっきりしないものがあるのも事実だ。
猪木さんの弟子で〝元暴走王〟こと小川直也氏は「会長(猪木さん)には『おめでとうございます』だね。勲章をいただけるのは何よりだし、オレもうれしいよ」と叙位・叙勲を祝福した上で「正直に言うと…『国民栄誉賞じゃないの?』かな。最初にそう思ったよ」とプロレスファンの複雑な胸中を代弁してくれた。
ネット上でも祝福に包まれる中で「猪木さんには国民栄誉賞がふさわしい」「生前に授与してほしかった」「遅すぎる、ぜひ国民栄誉賞も!」などと、小川氏と同様の声が相次いでいる。
記者には、猪木さん自身が同賞をほしかっただろうな、という確信もある。生前の口癖は「オレをみこしで担いでくれ」。自身の「価値」にはプライドを持っていた人だけに、スポーツ選手として最高の栄誉を手にしたかったはずだ。小川氏も「たぶん会長も、あちらの世界でボヤいているんじゃないの?」と苦笑いする。
何より猪木さんが国民栄誉賞を授与されなければ、プロレスラーが同賞に輝くことは永遠にないのではないか。同賞は時の政権の意向に左右されるとはいえ、プロレス界の現状を見ると、どうしてもそんな危惧を抱かざるを得ない。
猪木の前に猪木なく、猪木の後に猪木なし。プロレス界に猪木さんを超えるスーパースターが現れてほしいのは、やまやまだが…。〝最後のチャンス〟となってしまうのだろうか。
(元猪木担当・初山潤一)












