悲願の日本一を達成したオリックスでひときわ輝きを放ったのが〝無双リリーバー〟宇田川優希投手(23)だ。剛速球でピンチを何度も切り抜け、流れを渡さなかった。7月に育成から支配下登録され、8月に一軍デビュー。19試合で防御率0・81の好成績でチームを優勝に導いた。わずか数か月間で頂点まで駆け上がった剛腕の素顔に迫った。

「打てるもんなら打ってみろ」。184センチ、98キロの巨体から振り下ろす迫力の直球と落差のある変幻フォークでヤクルトの強打者を黙らせた。4試合に登板し、打者24人に対して2安打無失点、10奪三振。年俸240万円からスタートした男が5億円の山田、3冠王・村上に立ち向かい、痛快に仕留めた。第4戦では最速159キロを計測し、勝利投手をモノにした。

「今年の初めには日本シリーズのマウンドに立てるなんて思っていなかった。幸せだなって思います。普段通りというか、緊張はするけど、どの相手でも自分の投球をする。弱気な投球は自分ではないし、打ってみろ、という気持ちで投げてます。山田選手とか村上選手とか、侍ジャパンに入るようなすごい選手。同じ球界なのにテレビの中の存在と思っていた。打席にそういう選手がいると、燃えますね」

 2020年のドラフトで育成3位で指名。育成なら仙台大から社会人に行くと決めていたが、悩んだ結果、入団を決意。しかし、思うように結果が出ず、1年目の二軍戦登板は1試合だけ。「このままならクビかな、社会人に行っていたら…」。今季も調子が上がらず、挙げ句に3月にコロナ感染。体重は90キロ台前半から80キロ台に減り、筋肉量も落ちた。

 そこから必死にウエートトレに取り組み、球速、力強さがアップしていく。中垣巡回ヘッドコーチとフォームを見直し、フォークの切れ味が増した。打者に向かう意識も強気に変身。常時150キロ台中盤を叩き出し、結果が出始めると7月末に念願の支配下登録され、8月に一軍昇格。19試合で打者87人に対峙し、32奪三振と大車輪の活躍を見せた。

 球速へのこだわりは強く、同じリリーフの山崎颯がCSファイナルで160キロをマークしたことに大きな刺激を受けている。「毎回MAX出してやろうと思っている。負けたくないですね。二軍から一緒にウエートをやってきたのでうれしい気持ちもあるけど、負けてるので悔しい。常に颯一郎より上を行きたい。そこはガツガツいきたい」とライバル心を燃やす。

 見た目通りの大食いで「ご飯大盛り4杯は食う」が、お酒は飲めず、性格は意外とおとなしい。「人見知りなのでガツガツいけない。距離が縮まるまでは自分からいけないタイプです。一軍来た時も本田(仁海)としかしゃべれなかった」という。

 日本人の父とフィリピン人の母親を持つ。「小さいころに行ったかもしれないけど、覚えていない。海がきれいなとこだし、いつか行ってみたい。埼玉の地元が海がないので」と母の故郷に思いをはせる。野球では他の日本人選手との「馬力の違い」を実感しており「僕のフォームって腕が遅れて出てくるとか、上半身の使い方が特殊ってよく言われるんですけど、それは自分がそういう練習をしてきたわけじゃなくて自然になった。他の日本人選手と比べると体のつくりが違うのかな、有利なのかなって思うんです」。

 将来は抑えをやりたい思いを持つが「回またぎの楽しさも感じている。展開で9回だけでもロングでも両方やりたい。藤川球児さん(元阪神)をよく見てた。真っすぐがくると分かってても打てないような…かっこいい、僕もあんなふうになりたい」と胸を膨らませる。

 育成枠から日本一に駆け上がったドリーム男。「プロに来てよかった。大舞台でも楽しめている自分がいる。育成でも指名されればプロの世界に入れる。順位じゃなく、入ってからが勝負。そこからが本番」。その姿は往年の〝ハマの大魔神〟佐々木主浩氏をほうふつとさせるとの声もある。無双リリーバーが〝令和の大魔神〟になる日も近い。