1日に心不全で死去したプロレス界のスーパースター、アントニオ猪木さん(享年79)は生前、難病「全身性トランスサイレチンアミロイドーシス」との闘いを公開して大きな注目を集めた。だが、それもほんの一部に過ぎない。厳しい闘病生活の最中にも、人知れず楽しみにしていたものがあった。それは――。
13日に営まれた猪木さんの通夜には333人、14日の告別式には358人の関係者が出席し、思い思いに故人との別れを告げた。それでも今なお、プロレス・格闘技界は〝燃える闘魂〟を失った深い悲しみに包まれている。
2018年に難病を発症した猪木さんは、闘病姿を積極的に公開してきた。自身の公式ユーチューブチャンネルのみならず、今年8月には日本テレビ系「24時間テレビ」にも出演。もちろんその裏側で、病魔との闘いは壮絶を極めた。
夜に横になっても苦しくなって深夜に目を覚ましてしまう日々が続いた。闘病中は体調管理のため、毎日体温と血圧を測っていたが、その数字に少しでも納得がいかないと何度も測り直していた。決して妥協しない猪木さんらしい姿勢だった。
そんな中で最も楽しみにしていたのが、週に1回の食事会だ。猪木さんは長い間糖尿病を患っていたこともあり、食事制限を余儀なくされていた。だが、関係者は「我慢しすぎるのもよくないだろうということで、週に1回ほどは来客の方と同じものを食べる日を設けていました」と明かす。
食事会で好んで食べたのがウナギやフグ料理だ。食通で知られ、何よりも仲間と食事をすることを無上の喜びにしていた猪木さんらしいエピソードといえるだろう。ただし、話の続きがある。関係者はこう証言する。
「それでも、食べるとやっぱり体調は悪くなるんですよ。食事会の次の日は苦しそうでした。それでも食べるんです。それくらい、猪木さんはその日を本当に楽しみにしていたみたいでした」
仲間を歓迎する上で、猪木さんらしいサービス精神も旺盛だった。亡くなる直前まで友人や関係者に電話をかけて自宅に招待し、スタッフに高級なワインや日本酒を買っておくように指示。「アルコール類は飲めないはずなのになぜ…」といぶかしがりながらスタッフが用意すると、猪木さん自身は口にせず、来客に振る舞い目を細めていたという。ちなみに気に入らないブランドのワインを買って来た際には、買い直しを命じることもあったそうだ。
また、意外なところで美食家の一面を見せることもあった。ある日は深夜にスタッフを呼ぶと「温かいものが飲みたい」と言い出した。「お茶か、それとも白湯か、スープかな」と思いつつ「何が飲みたいですか?」と聞くと、まさかの「そば湯」という回答だった。
そば好きで知られた猪木さんの希望をかなえるべく、スタッフも深夜にそばのゆで汁を手に入れる方法を探った。だが、この時はご時世柄難しく、断念せざるを得なかったという。
闘病中も「猪木さんらしさ」が失われることはなかった。だからこそ最期の最期まで、ファンを魅了できたのだろう。












