巨人が11日から秋季練習を本格化させた。5年ぶりにBクラスに沈んだチームで、明るい話題となった一人がドラフト1位右腕・大勢投手(23)だ。1年目から守護神に定着し、新人最多記録に並ぶ37セーブをマーク。本人の努力と実力ももちろんだが、記録誕生の背景には原辰徳監督(64)と桑田真澄投手チーフコーチ(54)の間で繰り広げられた〝綱引き〟があった。

 ジャイアンツ球場で〝地獄の秋〟が幕を開けた。ナインはいきなりの20分間走でスタミナを奪われ、野手はバットを振り込み、地味な守備練習でさらに体力を消耗…。約3時間の練習を終えると、誰もが汗だくになってグラウンドを後にした。4位に沈んだ要因について「すべてでしょうね。すべてでしょう」と語っていた指揮官。チーム再建へ、練習強度は初日の10日とは比べ物にならないほど格段に上がった。

 屈辱にまみれた一年となったが、大躍進を遂げたのが大勢だ。開幕から守護神の座を射止め、初のシーズンを〝完走〟。この日の練習後には「自分の中で満足していない部分もありますし。もっと改善できるところがあるので、思い切って修正したい」と向上心をのぞかせた。

 いきなりのセーブ記録への過程では、首脳陣の間で繰り広げられた〝綱引き〟も多分に影響した。桑田コーチは大勢がシーズンを戦ったことがない新人であることなどを考慮し、原監督に「3連投をさせないでください」と進言。大きな故障につながれば、シーズンどころかプロ野球人生を棒に振る可能性だってある。これは選手個人の将来を思ってのこと。連投させた翌日はベンチ入りメンバーから外すなど、ブレーキをかけ続けた。

 一方で一軍は勝利こそが求められる舞台だ。ましてや昨季のリリーフ陣を支えたビエイラ、デラロサ、中川が故障や不調でそろって機能せず。最も信頼を置けたのが、新人の大勢だけという苦しすぎる台所事情だった。目の前の1勝をもぎ取るため、原監督が〝大勢頼み〟のアクセルを踏んだのも当然で「そういう部分(3連投)を教えていかなきゃダメですよ」と苦言を呈したこともあった。

 起用の最終決定権は指揮官にある。原監督も桑田コーチの言葉に耳を傾け、3日連続で登板する純粋な「3連投」は最終盤の一度(9月19日~21日)だけにとどめた。

 1年でも選手生命を伸ばしてあげたい桑田コーチと、勝つために出し惜しみしたくなかった原監督。大勢が「本当に桑田さんが僕たちのために犠牲になっていただいた」と話したのは偽らざる本音だろう。

 もちろん、原監督が起用していなければ、セーブ記録も生まれていない。両首脳の思いが交錯し、それに大勢が応えたからこそ生まれた充実のルーキーイヤー。2年目はどんな進化を遂げるのか見ものだ。