ヤクルト・高津監督は師匠のノムさんを超えることができるだろうか。
少々気の早い話だが、今年もリーグ優勝と日本シリーズを制してダブル連覇を達成すれば、あの野村監督も達成し得なかった球団史上初の偉業。ヤクルトも、いよいよ真の「黄金時代」を迎えることになるのだ。
実は、野村さんはヤクルト監督を辞した1998年、勇退記者会見でこうコメントしている。
「9年間、監督をさせていただきましたが、ヤクルトの黄金時代を築くことができなかった。それが私の最大の心残りです」
野村さんは90年から監督に就任して、リーグ優勝4度、日本一3度。それより以前、ヤクルトのリーグ優勝と日本一は広岡監督時代の78年の一度だけだったから、野村監督時代は十分に「黄金時代」と言ってもよさそうなものである。
しかし、当時野村さんが一番の理想とした名監督像は、巨人V9時代(65~73年の9年連続リーグ優勝と日本一)の川上監督。「プロ野球はペナントレースと日本シリーズを2年連続で勝てるほどのチームになって初めて黄金時代と言える」というのだ。
その点、野村監督時代のヤクルトはリーグ2連覇した93年以降、4、1、4、1、4位と、AクラスとBクラスを行ったり来たり。なぜこんなに極端な結果が繰り返されたのか、野村さんは98年の勇退会見で、非常に厳しくこう断じている。
「昨今の選手のプレーを見ていると、マンネリ化していて、何となく野球をやっている。そういう怠慢プレーをずっと見せつけられて、私も(退団するという)決定的決意を固めるに至りました」
野村さんはこのとき、翌年から阪神監督に就任することが内定していたとも言われる。だから、この発言がどこまで本音だったかはわからない。が、93年以降、1年おきにしか勝てないヤクルトに歯がゆさを感じていたことだけは確かだろう。
しかし、今のヤクルトは当時とは違うはずだ。高津監督は若き主砲・村上に「チームリーダーとして人間的にももっともっと成長してほしい」と求めて、村上もふだんから中心選手らしい言動を心がけている。今年のヤクルトは、その村上に引っ張られて、歴史的な独走優勝を果たした。
野村ID野球の根幹は「野球人たる前に社会人たれ」という人間教育にあった。その理念を受け継いだ高津監督が、野村さんを上回る偉業を達成できる可能性は、決して低くはないと思う。
☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。













