【ラオウを覚醒させた男・根鈴雄次氏に聞く(3)】今や日本の野球は本場アメリカのベースボールに迫る進化を遂げている。第1回、2回のWBCでは連覇を達成。2021年東京五輪では悲願の金メダルに輝いた。

 抜群の制球力を武器とする投手陣を軸に、緻密な作戦で得点する攻撃スタイル。侍ジャパンのベースボールは世界を席巻したという表現は事実だ。

 ただ、これは競技、試合結果での話だ。日本人としては認めたくはないが、個々のプレーヤーを比較すれば話はまったく違ってくるだろう。

 MLBとNPBでパワー系の野手を列挙した場合、バリー・ボンズやマイク・トラウトに匹敵する選手が日本に見当たるだろうか。

 身長173センチで米球界に挑んだ根鈴雄次氏(48)は身をもって、厳しい事実と戦ってきた一人だ。日本人の骨格では鍛え過ぎると故障につながる。そんな〝定説〟も跳ねのけて、限界を超えて鍛えることで3Aにまでたどり着いた。

「僕は早いうちからアメリカで野球選手になった。トレーニングの現場ではアメフト選手がどんなものかも目の当たりにしてきた。だから知ってるんです。大きくなると動けない、ケガをするんではない。アメフト選手ぐらいの大きい体になってもアスリートは全然、動けます」

 日本では「デカい=NG」という風潮すらある。プロレスや相撲をやるんじゃあるまいしと、否定するプロ野球OBや関係者も多い。

 ただ、現代にはそれを真っ向から覆そうとしている若者がMLBで大活躍している。もちろん大谷翔平のことだ。

「今や身長193センチの大谷選手を『ノッポだな』という印象で見ている人はいないでしょう。日本ハム時代は手足が長い印象でしたが、今はどちらかといえば、腕が短く見えてしまうほどに鍛え上げられています。両親、神様からギフトされたフレームを遺伝的に限界まで鍛える努力をしている。それでもまだまだと思ってやっている。本場のストレングスお化けと真っ向勝負している。本当にカッコイイです」

 NPBでの成功を目指すことだってもちろん尊い。だが、神より与えられし巨躯を授かったプレーヤーは、そこに収まってほしくない。世界一を目指し、子供たちに夢を与えてほしいというのが根鈴氏の考えだ。

 根鈴氏の自著「MLBでホームラン王になるための打撃論」には思いが集約されている。日本人には無理だとは言わせたくない。可能性があることを証明したい。

「大好きな野球」を極めるためのツールとしての「根鈴スイング」。これを伝授し、若者とともに夢をつなぐことが根鈴氏の天職だ。(この項終わり)

☆楊枝秀基(ようじ・ひでき) 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。