【中国・張家口発】レジェンド師匠との本当の関係は――。北京五輪スキージャンプ男子ノーマルヒル決勝(6日、国家スキージャンプセンター)、日本のエース・小林陵侑(25=土屋ホーム)が合計275・0点で金メダルを獲得した。日本勢として個人の金メダルは1998年長野五輪ラージヒルの船木和喜以来。ノーマルヒルでは72年札幌五輪の笠谷幸生から実に50年ぶりの快挙となったが、所属の監督を務めるソチ五輪ラージヒル銀メダルの葛西紀明(49)は〝師弟逆転秘話〟を明かした。
歓喜の瞬間、小林陵は右手で何度もガッツポーズをつくり、雄たけびを上げた。「よかったのひと言しかない。2本とも集中してイメージ通り動けた」と文句なしのジャンプを自画自賛。決勝前の試技を行わず、ぶっつけ本番で臨んだのは「紀さんのいつも使う戦法」と、葛西の〝ルーティン〟を取り入れていた。
五輪コメンテーターとして現地入りしていた葛西の目の前で頂点に立ったことには「選手として一緒にはできなかったけど、一緒の時間を共有できてすごくうれしい」と満面の笑みを浮かべた。
高校卒業後に土屋ホーム所属となってから7年。葛西とは濃密な時間を過ごしてきた。〝師匠〟との出会いは高校3年のときだった。葛西は当時の小林陵について「まだまだジャンプは完成していなかったけど、うちで僕や外国人コーチに教わってしっかりトレーニングすれば、すぐに世界のトップに立てると思う」と可能性を感じていたという。
その期待通り、小林陵はその名を世界にとどろかせた。前回の平昌五輪は7位入賞に終わったが、2019―20年シーズンはW杯総合優勝。今季は新型コロナウイルスの陽性判定を受ける想定外の事態に見舞われながらも、W杯伝統のジャンプ週間で3季ぶりの総合Vを果たすなど、好調を維持したまま北京に乗り込んだ。
そんな2人の関係は、かなりフランクだ。葛西が小林陵の〝本当の素顔〟を明かす。
「なかなかひょうきんな男。頭の回転も速いし、何か言ったらツッコミが早かったり、しかもボソッとツッコんでくる。聞こえないぐらいの声だけど、僕には聞こえていて、『面白くねえ。全然面白くねえよ、お前(笑い)』と返したりする」
レジェンドと呼ばれる師匠にタメ口でツッコミを入れるのだから、なかなかの度胸の持ち主だ…。さらに競技を離れると、師弟の立場が〝逆転〟することもあるという。
ファッションは互いに違う種類を好み、葛西は「Tシャツやパーカーとかは、もともと細身の感じが好き」で、一方の小林陵はオーバーサイズを着ることが多い。すると「最初は『カッコ悪っ』『だらしねえ』とか思ってたんですけど、だんだんカッコよく見えてきて。じゃあ、マネしようと」(葛西)。
さらに、色に関しても「自分は黒系だったけど、陵侑は白とか明るい色を着ていて。『白もいいね』と言っていたら、白いTシャツをプレゼントしてもらった。それ以来、白いTシャツを着るようになったね」と逆に師匠が〝陵侑監督〟の影響を受けていたのだ。
愛弟子の快挙に「たまってる涙が全部出た」と大感激のレジェンドは「伝説に残る金メダル」とうなった。その師匠の夢でもあった頂点を実現した小林陵は、葛西の首にメダルをかけることを約束した。新たな伝説の始まりかもしれない。












