米国とベネズエラの政治的緊張が、メジャーリーグにも影を落とし始めつつある。プエルトリコで英語とスペイン語の両言語に唯一対応し、ピュリツァー賞受賞歴も誇る中南米系の有力紙「サンファン・デイリー・スター」が報じたところによれば、米軍がベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束した〝強制介入〟を受け、MLB関係者の間では「最悪のシナリオ」を想定する動きも徐々に広がっているという。
マドゥロ政権の崩壊後、ベネズエラでは大統領権限代行に就任したデルシー・ロドリゲス副大統領による暫定政権が発足したものの、米国のドナルド・トランプ大統領との協調路線と国内に残る反米勢力への配慮という〝二正面対応〟を迫られ、国内情勢は依然として不安定だ。米国主導の半ば強制的な民主化への道筋は描かれつつあるものの、ベネズエラ旧体制寄りのロシアや中国がマドゥロ大統領拘束に激しく反発していることからも、実効支配の安定には「なお時間を要する」との見方が支配的となっている。
この余波を最も警戒しているのが、MLBだ。現在、メジャーのロースターには60人以上のベネズエラ出身選手が在籍し、ホセ・アルトゥーベ外野手(35=アストロズ)やロナルド・アクーニャ・ジュニア外野手(28=ブレーブス)といったスターも名を連ねる。米軍によるベネズエラ首都・カラカス侵攻直後からMLB各球団は安否確認に奔走し、いずれもフロント間では水面下で緊急連絡が飛び交った。
さらに神経をとがらせる要因となっているのが、3月に開催予定の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への影響だ。ベネズエラ代表はすでに参加予定国に含まれているが、渡航制限やビザ問題が再燃すれば、参加そのものが揺らぐ可能性も否定できない。実質的な大会運営主体であるMLBは、公式なコメントを控えつつも情勢を注視しているとされる。
実際、過去にもベネズエラの若年層で構成された同国代表チームが米国入国を拒否されるなど、政治と野球のあつれきは繰り返されてきた。今回の軍事介入は、その緊張を一段引き上げた格好だ。
「私たちは悪者ではない。ただ野球をしたいだけだ」
前大会に引き続きWBCでベネズエラ代表を率いる予定のオマール・ロペス監督(49=アストロズベンチコーチ)がこのように述べた言葉は、混迷する国情と野球界の切実な思いを象徴している。政変の行方次第ではMLBとWBCの舞台裏で、緊急対応を迫られることになりそうな気配だ。












