海の向こうのライバルがモチベーションの源だ。女子プロレス「スターダム」のワールド・オブ・スターダム選手権(29日、東京・大田区総合体育館)は王者の朱里(33)が、ひめか(24)を退け、4度目の防衛に成功した。盤石の強さを示した王者が意識するのは、米WWEで活躍する〝女帝〟アスカ(40)の存在。将来的には大舞台での「再会」を夢見ている。

 圧巻だった。3月まで同じ「ドンナ・デル・モンド」に所属したひめかを挑戦者に迎えた朱里はパワーに苦しみながらも、蹴りと関節技で徐々に追い込んでいく。ミドルキック4連発を皮切りに反撃に転じ、最後は肩車した状態から前方に落とす必殺「朱世界」で3カウントを奪取した。

 試合後は「やるじゃねえか。頭、もげるかと思った。ユニットは別になったけど、ひめかのことは見てるし、成長した姿を楽しみにしてる。またやりましょう」と挑戦者をたたえた。

 そんな決戦を控えた先日、うれしいニュースを目にした。欠場を続けていたアスカが約9か月ぶりに復帰を果たした。現地メディアによると、左肩を負傷していたとみられる。

「華名」のリングネームで日本で活動したときのアスカとは、SMASH、REINA女子のリングなどで幾度となく激闘を繰り広げた。「自分は華名さんのおかげで成長できた部分があるし、『朱里対華名』のライバル関係があったから、今の朱里がある」と振り返る。

 実は朱里もかつて、米国を拠点とする2つの有力団体からオファーをもらったことがある。だが、条件面と環境面を考えた末に2度断り、もう一つの団体とは新型コロナウイルス禍により立ち消えになった。

 もちろん自身の選択に後悔はない。「私はスターダムを選んでよかったと思います。今、スターダムが勢いづいているし、赤いベルトが取れたり、自分のユニットがつくれたりできたので、スターダムで輝くことができている。自分も華名さんに負けないくらいすごくなっていきたいと、ずっと思っています」と胸を張る。

 その先には究極の目標がある。「いつかは試合をしたい。東京ドームのメインで『アスカ対朱里』だったら見たいと(周囲から)言われたことがある。だから私が刺激を受ける存在として、まだまだトップ戦線でやってほしい。華名さんの活躍が私のモチベーションにもなる」と目を輝かせた。

 次期挑戦者には、デスマッチ&ハードコアユニット「プロミネンス」の世羅りさ(30)を指名し、5月28日大田区大会でのV5戦が決定的になった。尊敬する先輩と「再会」する日まで、日本女子プロ界のトップを走り続ける。