全日本プロレスの秋山準(49)が、8日付で「オールジャパン・プロレスリング」の社長を退任したことが9日、本紙の取材で分かった。2014年7月1日の就任から団体の再建と選手育成に尽力し、5年の節目でバトンタッチした。今後はGMとして現場を統括する。後任には実質的な団体のオーナー、福田剛紀氏(53)が新社長に就任。10日の東京・後楽園ホール大会で正式発表される予定で、老舗団体が新たな局面を迎えた。

 8日に横浜市内で行われた株主総会で、秋山の退任と福田氏の新社長就任が決まった。秋山は本紙の取材に「社長として5年がたって、オーナーから会長にという話をいただいた。だけど自分としては選手の近くにいたいという気持ちがあったから、現場にいさせてほしいと希望した。この先のことを考えると、団体を大きくするためにも経営はオーナーにやっていただいた方がいい」と経緯を明かした。

 昨年から会長就任の打診を受けていたが、秋山の心は変わらなかった。福田社長は「負のイメージを払拭し、活気ある状態にしてくれた。十分に成果を出してもらいました。選手の育成、リングのクオリティーを維持することだけじゃなく、経営までお願いして、しんどかったと思う。5年、頑張っていただいたので、今後は数字を追いかけるのではなく、リングの戦いに専念してもらいたい」と語った。

 秋山が社長に就任した2014年7月、団体は低迷期だった。12年11月に全日プロを運営する全日本プロレスリングシステムズ社の白石伸生氏がオーナーになったものの、13年6月に武藤敬司らW―1勢の大量離脱を招き、客足も遠のいた。

 秋山の社長就任後は、現3冠ヘビー級王者の宮原健斗(30)がエースとして頭角を現し、青柳優馬(23)や野村直矢(25)らの若手勢が急成長。集客も上向き、王道マット再建に一定の成果を残した。一方で経営者と中心選手、二足のわらじを履くことは負担も大きかった。16年7月の宮原戦を最後に3冠ヘビー級王座戦線に絡んでおらず、一歩退いた位置にいた。

 だが今後は違う。取締役として同団体史上初めて置かれるGM職に就任。さらに現場監督として選手のレベルアップを図る立場になり「社長の時は言えないこともあったけど、以前の俺に戻る。現場でがんがん言えるのが俺には合っている」と目を輝かせた。

 また、プロレス業界は新日本プロレスの1強時代が続き、今年2月に新体制に移行したノアも明確な業界2位を狙う。不動産やホテル事業を手がける実業家でもある福田社長は「(周囲は)1位、2位と順位をつけたがるけど、クオリティーは一番だと思っています。今のリングの戦いに自信がありますので、全日本を見る人を増やします」と展望を語った。

 秋山も「1位を追わないとダメ。(新日本との)差は悔しいし、やっていることは負けていない。俺が(全日本、ノアで)やっていた時は一番だと思ってやっていた。今の若い選手にも『くそっ』と思ってほしい。全員がその気持ちを持てば距離が縮む。秋山の時代じゃないと思った時は退きますよ」と決意を述べた。最後は「令和の長州力を目指すよ。手ぬぐいを頭に巻いて指導するか」と現場監督として気合を入れ、さらなる団体の飛躍を見据えた。