今季、盗塁王に輝いた阪神・中野拓夢内野手(25)が、15日のNPBアワーズに登場。プロ初タイトルに「来年も近本さんが一番のライバル。50盗塁を目標にどんどん走りたい」と満面の笑みで、喜びを口にした。社会人出身の即戦力新人として、5月以降に遊撃の定位置を奪取すると135試合、打率2割7分3厘でシーズン後半は2番打者にも定着。最後は1番を打つ同僚の先輩・近本とのマッチレースを制し30盗塁で、初の勲章をゲットした。

 チームの新人では10勝のルーキー左腕・伊藤将とともに25歳で最年長。グラウンド外でも、その振る舞いはルーキーたちの〝模範生〟だった。年間を通じて一軍に帯同し、ローテーションの兼ね合いで遠征不参加だったときもある伊藤将とは異なり、遠征時の「雑用係」でもフル参戦だった。

 昨年に引き続き、遠征先ではコンビニなどの生活必需品購入以外は基本的に外出が禁じられていたシーズン。試合後は野手陣を中心に先輩選手からの〝ご要望〟をリサーチし、宿舎最寄りのコンビニなどへの買い出し役を買って出るなどレギュラーになった後も〝1年生〟の仕事もまっとうした。

 優勝争いが佳境に入った9月。自らの美技で6―6で引き分けに持ち込んだ同24日の東京ドームでの巨人戦後も、いつもと変わらず〝パシリ〟を引き受け、宿舎周辺のコンビニで買い出しを終えたときには、激戦を見守った虎党にも遭遇。激励を受けると、立ち止まって丁寧に頭を下げるなど、謙虚な人柄は変わらず。偶然にも後方からその姿を見ていた球団関係者は…。

「こういうところ。新人のなかでも一番でプレーに安定感あるというか浮き沈みがないでしょ? レギュラーで出るようになると、より調子の浮き沈みはあるし、精神的な疲労もあるだろうけどね。そういうのを公の場では一切見せない。見た目よりはるかにハートが強いよ」

 実るほど頭を垂れる猛虎の韋駄天は、来季もさらに頼りになる存在となりそうだ。