阪神の藤浪晋太郎投手(26)が21日のヤクルト戦(神宮)に先発し、今季“5度目の正直”で692日ぶり、2018年9月29日以来となる白星を手にした。7回途中6安打6三振4失点の力投で、チームの連敗も3で止め、37イニング連続無得点も自身のバットでピリオドを打った。ボーアの21試合ぶりの一発など打線にも強力に援護され、遠かった1勝をようやく手にした藤浪。その裏には復活を待ち望んでいた意外な人たちがいた。

 試合後の藤浪は「2年間、勝てなかったのですごい長かったなという気持ちが強い。これで楽になれるかな。周りがどうしても何日ぶり、何日ぶりと言うので」と率直な心境を吐露した。

 矢野監督は「いろんな人に支えてもらっての1勝。厳しいことを言われることも多かったと思うけど、よくここまで来たなと思う。ここからまたスタート。(今後は)あいつ自身が引っ張って勝つピッチングをしてほしい」と期待を込めた。

 今季は春季キャンプ、実戦で好投し、復活を感じさせる滑り出し。しかし3月26日に新型コロナ感染が判明し入院を余儀なくされた。退院、謝罪会見を経て、5月19日から一軍練習合流した矢先、遅刻による懲罰降格。降格後の初登板、6月3日の二軍練習試合ソフトバンク戦では「右胸の軽度の筋挫傷」で緊急降板となるなど苦難の連続だった。

 それでも背水の覚悟で臨んだシーズン。二軍で好投を続け7月19日に一軍昇格。同23日広島戦(甲子園)に初先発で黒星を喫し、それを皮切りに4戦4敗だったが、投球内容はむしろ良く、ローテを守り続けてこの日の復活星につなげた。

 指揮官が語るようにこの「1勝」は、これまで藤浪を支えてきた人たちや、復活を期待する多くの人たちがいたからこそだろう。「おやつカンパニー」の人たちもそうだった。

 同社は、毎年1月に藤浪が母校・大阪桐蔭へ自主トレに訪れる際、恩師の西谷監督に大量差し入れするスナック菓子「ベビースターラーメン」の製造元。差し入れ量は年々増加し、昨年はついに800袋となった。昨年2月には、ついにおやつカンパニーから藤浪に感謝状などが贈呈され、両者にはつながりができた。

 おやつカンパニーの担当者は、現在でも「弊社のPRに大変貢献いただいております。さらなる活躍を期待しているところです」と、変わらぬ期待を寄せている。一時、話題となった「ベビースターラーメン・藤浪晋太郎味」などのコラボも「引き続き検討を進めてまいりたいと思っております」。このところの藤浪の不調により企画を白紙とすることなく、ずっと復活を待っていたのだ。

 藤浪は今季の苦難を振り返り「人の痛みを分かるようになった。人間として成長できた」と語った。今後も多くの人の期待を背負い腕を振り続ける。