緊急事態宣言が延長され、いまだ公式戦開幕のめどが立たないプロ野球。選手の焦燥感がピークを迎えつつあるが、それ以上に深刻な立場に置かれているのがNPB(日本野球機構)入りを目指す独立リーグの選手たちだ。

 NPB同様、独立リーグの選手も活動自粛を強いられているが、その実情はNPB戦士とは大きく異なる。元ロッテ外野手で現在BCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスの岡田幸文外野守備走塁コーチ(35)は「独立リーグの選手の苦しみは相当なもの」と目の当たりにする窮状をこう語る。

「NPBの選手は給料が保証されているため、トレーニングを続けながら開幕を待つことができます。でも、独立リーグの選手にその余裕はない。ほとんどの選手が1年契約で試合でアピールできなければプロの道が断たれてしまう。そんな選手たちの唯一のアピールの場が試合ですが、その試合が行われないのですから。生活が困窮するだけでなく、将来の夢や希望までもが失われつつある。指導する立場から見ても本当に不安です」

 栃木の選手は現在、球団から月10万円の生活資金が支給されているそうだが、球団の活動自粛もあり原則アルバイトはできない。全体練習もウイルス感染防止の観点から行えず、選手は自主練習の日々。球団施設は使用できるものの、一選手に割り当てられる時間は1日2時間ほどしかない。

「練習時間や場所があるのはありがたい。でも、正直なところ独立リーグの選手は練習量ではない。いかに限られた試合数の中で結果を残し、プロのスカウトにアピールできるか。スカウトの目に留まり、ドラフトで指名されるか。これに尽きる。誰もがその思いを持ち続け少しでも早いシーズン開幕を願っていた。その矢先の5月上旬の緊急事態宣言延長でしたから。選手の落胆は計り知れない。このままでは選手もモチベーションを保つことが難しい。練習試合でも無観客試合でもいいので何とか試合が行えるようになってほしいです」(岡田コーチ)

 現状ではNPBの活動指針に準じる独立リーグ。今月末に緊急事態宣言が解除されればチーム、選手の活動状況は改善されるが楽観はできない。それでも「とにかく今はチーム一丸となって気持ちを落とさないようにやっていくしかない」とは岡田コーチ。苦境に立ち向かいながらも必死でシーズン開幕を見据えている。