西武・秋山翔吾外野手(31)が29日、侍ジャパンの合宿地・沖縄で海外FA権を行使して米大リーグに挑戦する意思を表明した。秋山を巡っては4年総額20億円で引き留めを図っている西武内からメジャー交渉が不調に終わった場合の「ワーストシナリオ」を警戒する声が漏れている。

 少年時代に「全く現実的ではないところ」だった米大リーグは、2011年にドラフト3位で西武に入団し、5年目にシーズン216安打のプロ野球記録を樹立したことで「だんだんと自分に力が付いてきたのを感じ、ああいう舞台でやるのはどういうものか知ってみたい」との思いが芽生えた。侍ジャパンでの経験も後押しとなり「最高峰と言われるメジャーリーグを意識した」と言う。一方で「どういうお話が来るかも分かりませんし、自分がどこに行きたいということより、必要としてくれるところがあるかどうかっていう不安の方が先にある」と先の読めないメジャー交渉に素直な不安も口にした。

 01年のイチローと新庄の挑戦から18年。日本人野手のサンプルも出揃った感があるメジャー側の評価は年々細かくシビアになっている。あるメジャー球団関係者は「今の段階で彼を補強のファーストチョイスと考えている球団でもない限り、多くの球団は年俸も抑えたい。チャンスは与えるが、できれば(3月の)キャンプで対応力を見極めるためにスプリット契約(メジャーとマイナーの二重契約)を念頭に置く球団がほとんどなのでは…」と話す。

 金額に直せば、秋山の今季年俸2億3500万円をベースにした2年総額500万ドル(約5億4000万円)~700万ドル(約7億5600万円)あたりが適正相場。そんな状況下で、問題となってきそうなのがメジャー交渉が不調に終わった場合の身の処し方だ。

 秋山は米国との交渉に関して「リミットを決めないとキリがなくなる。待てども待てどもということはあるので、ある程度のところで線を引かなきゃいけないところは出てくる」と言及。つまりマイナー契約まで含め、是が非でもメジャー挑戦というスタンスではないということだ。

 国内の選択肢に関しても「そこはまだ、はっきり言えない。それはちょっときつい話になるのかな。それを今考えるんだったらここで海外FA権行使の発表をする意味がないと思うので。考えてないとかではなく、まずは海外の球団と話を進めていくのが第一の考え。それ以降のことは正直、分からない」とぼかし、西武残留および他球団への移籍の可能性を否定しなかった。

 秋山の周辺からはすでに「米国側の動きは正直分からない。国内球団に関しては並行して(交渉を)やっていくことになると思います」というスケジュールが明かされているが、西武内部からは2年連続の「ワーストシナリオ」を懸念する声が早くも聞こえてくる。

 関係者の一人は「おそらく楽天がこのオフ狙っている最大のターゲットは秋山。メジャーをはるかに上回る、去年の浅村と同等の条件で勝負に出てくるでしょう」と西武の4年20億円を超える5年総額35億円の提示を予想している。球界、選手間でまことしやかに語られてきた「隠れ年俸トップ」と言われる浅村の今季年俸7億円。春先にその金額の噂を聞いた秋山も「そんな契約が日本にあるんだ、と思った」と目を丸くしていたものだ。野球人生の分岐点に立つ侍ジャパンの背番号55は究極の選択を迫られるかもしれない。=金額は推定=