夏に弱かった名門が、汚名返上の躍進を続けている。第104回全国高校野球選手権大会(15日、甲子園)第10日第3試合は愛工大名電(愛知)が、明豊(大分)を5―2で下して41年ぶりの8強入りを決めた。

 投打がかみ合い、仙台育英(宮城)と激突する準々決勝に弾みをつけた。初回に絶対的4番・山田(3年)の犠飛で先制。その後も小刻みに加点すると、5回には有馬と市橋(ともに3年)の連続適時打で試合の流れを決めた。投げてはプロ注目左腕・有馬が9回2失点完投。7回終了後に倉野監督から「8回、9回は岩瀬と山田でいきたい」と伝えられたエースだが「いや、投げさせてください。いけます」と続投を志願して、120球を投げ切った。

 工藤公康、イチローらを輩出し、2005年には春のセンバツを制した名門だが、夏の実績は近年乏しかった。今大会の2回戦で挙げた「夏2勝」さえも41年ぶり。ジンクスを打ち破る快進撃にOBや学校は大いに沸いている。

 今の3年生は〝大変革1期生〟だ。2020年に躍進の起点があった。ボールの回転数や打球速度などを計測する機器を導入。さまざまなデータを収集して動作を分析し、個々の技術改善に役立てた。メジャーなどで進む新たなアプローチが奏功し、チーム強化に成功。ただ、それだけではなかった。チーム関係者が「大きな変化だった」と一様に口を揃える改革があった。

 選手の呼称を「姓呼び」から「名呼び」に統一したことだ。一般社会でも日本では「姓」で相手を呼ぶことが多いが、倉野監督の判断で特に指導者が選手の名前を呼ぶ際は〝下の名前〟で呼ぶことを徹底。「仲間意識を高め、選手との距離を縮める」のが狙いだった。

 この〝ファーストネーム改革〟は、徐々に効果が表れ「今の世代の子たちにあった距離感で、意思の疎通がスムーズになった」「聞きたいことをストレートに返してくれるようになった」(コーチ陣)と指導効率が向上し、信頼関係を深める上でも大きな成果を生んでいる。

 全国最多175校の激戦区・愛知大会を2年連続で制し、汚名を返上する夏3勝。変革の成果を実感する現場の声には、さらなる躍進の期待感が高まっている。