ベストメンバーには程遠かったが、最善を尽くした結果だった。第104回全国高校野球選手権大会(甲子園)第4日の第4試合に登場した県岐阜商(岐阜)は、開幕前日に新型コロナウイルス集団感染が発生した影響で、登録選手を10人入れ替えての初戦。初出場の社(兵庫)を相手に序盤から守勢に回り、1―10の大差で敗れた。

 出場が危ぶまれる中、鍛治舎監督は2度辞退を検討した。「野球にならない。相手にもファンにも申し訳ない」との思いからだった。だが、主砲・伊藤ら残る3年生部員のためにも「自分から幕を引くわけにはいかない」と翻意。大会開幕後に異例の救済策とも言える「集団感染でも選手変更を認める」というガイドラインの改定もあって、この日の初戦を迎えた。

 二枚看板であるエース・井上と小西、正捕手の村瀬、遊撃手の内藤、中堅手の後藤(いずれも3年)を欠く布陣では戦力ダウンは必至だった。変更後のメンバーは3年生が3人、2年生が11人、1年生が4人という編成。経験不足、連携不足は否めず、勝利を望むには酷だった。3回までに押し出し2つを含む7四球、失策も絡んで8失点。兵庫156校の代表である社を相手に防戦一方の戦いは致し方なかった。

 一塁側アルプス席は終始静かだったが、県岐阜商ナインに向けられたまなざしは暖かかった。「出場辞退よりも良かった。試合をさせてもらえたことが何より。『センターラインが抜けたら試合にならない』。そんな感想を言い合えるのも、試合を用意してもらったから」。OBや保護者はそう感謝した。

 さらに鍛治舎監督が思いを巡らせて組んだ変更後のチーム編成についても「純粋に『実力』で選んでいるなと感じた。温情で3年生を出場させるのは相手にも失礼。下級生に経験を積ませる考えも少しはあっただろうが、精いっぱい、勝ちに行ったことが伝わった」と、勝負にこだわり続けた名将に拍手が送られた。また、大敗後も関係者の間からは「社さんは強かった。だから、試合に出た下級生は財産になる」と相手への謝意も示された。

 コロナに翻弄された球児たち。「甲子園は楽しかったぞ、と(出られなかった仲間に)言いたいです」。涙声の河合(3年)の言葉には〝救いの手〟への最大の感謝が込められていた。