甲子園では白球を追い、寮では鍵盤を奏でる――。仙台育英の〝二刀流〟が、今度はバットで勝利を引き寄せた。第108回全国高校野球選手権大会第8日の12日、甲子園球場で行われた第2試合の2回戦で、仙台育英(宮城)が花咲徳栄(埼玉)を1―0で下し、16強入りを決めた。
息詰まる投手戦を動かしたのは、初戦の札幌日大戦(5日)で大会第1号ソロを放った4番・田山纏外野手(3年)だ。0―0の6回無死一、三塁から左前へ決勝適時打。先発した古川(2年)も9回5安打無失点で完封し、虎の子の1点を守り抜いた。
須江監督は熱戦を振り返り「勝敗は運の差だけです」と淡々。それほど紙一重の勝負だった。
プロも注目する田山だが、非凡なのは野球のセンスだけではない。実は音楽の才能も持ち合わせている。仙台育英では毎年12月の「3年生を送る会」で、引退した3年生に合唱を贈るのが伝統行事。3歳から12歳までピアノを習っていた田山は、1年時からその伴奏を任されてきたという。
曲が決まると学校から借りた電子ピアノを寮に持ち込み、毎日約1時間の練習。時にはトレーニングや食事をしながら鍵盤を弾くほど熱心に取り組んでいた。12月に入れば本格的な合唱練習が始まり、本番直前には野球の練習時間を1時間半削って部員全員で取り組む。その頃には田山は楽譜を暗譜するほど仕上げ、完成度の高い伴奏でナインを驚かせた。
人気バンド「Mrs.GREEN APPLE」の難易度の高いアップテンポな曲も2年連続で弾きこなし、引退する3年生を魅了。感動のあまり涙を流す先輩もいたという。
同学年のある部員(3年)は「田山はすごく多才。ピアノもできるし、野球もうまいし…。仙台育英自慢の〝二刀流〟ですよ」と笑う。甲子園の主役候補は、バットと鍵盤の両方で仙台育英の歴史に名を刻もうとしている。












