それでも笑顔はなかった。第104回全国高校野球選手権大会4日目(9日・甲子園)の第4試合で初出場の社(兵庫)が2年連続30度目出場の県岐阜商(岐阜)に10―1と大勝し、2回戦進出を果たした。2004年のセンバツでは4強に進出した公立の強豪校が、創部74年目にして初めて立った夏の聖地グラウンドで歴史的勝利を飾った。

 初回一死三塁から3番・福谷(3年)が右前適時打を放って幸先よく先制。続く2回は大西(3年)の左前適時打、福谷(3年)の2点左前適時打など打者9人の猛攻で一挙4得点を奪い、3回には相手のミスも絡んで3点を加点し、一気に突き放した。終わってみれば、13安打10得点と最後まで攻撃の手を緩めなかった。

 投げては先発・堀田(3年)が9回を投げ抜き、6安打1失点で完投勝利。ただ、勝利を飾っても社の選手たちに喜ぶ様子は見られず黙々と整列し、新型コロナウイルス集団感染のためにメンバー18人中10人の登録選手変更を余儀なくされた県岐阜商の面々に配慮していた。

 試合後の山本巧監督(50)は場内に校歌が流れた時の感想を問われ「県立岐阜商業さんの10名の選手が自宅待機、静養を余儀なくされていることが事実としてありますので、そのことを考えていました」と静かに語ると「ウチとしても感染対策を徹底し、やるべきことをやっていく。それだけでした」と続けてコメント。夏初勝利の喜びは一切見せず相手を最後まで気遣っていた。