第94回選抜高校野球大会第7日(25日、甲子園)で、近江(滋賀)のエース・山田陽翔(3年)がわずか87球で2試合連続の完投。投打がかみ合い、聖光学院(福島)に7―2の快勝で19年ぶりの春8強入りを決めた。

 初戦の長崎日大(長崎)戦で延長13回165球を投げ抜いた右腕は、少ない球数で9回2失点の好投。大会が進むにつれ「球数制限」がクローズアップされる中、省エネで投げ切った。

 一塁側アルプス席で目を細めていたのは、多賀章仁監督(62)を支える小森博之コーチ(38)だ。「165球を投げた翌日の練習で一番最初にグラウンドに出てきて、ランニングの先頭で一番大きな声を出しているんです。疲れていても顔には一切出さず、チームを鼓舞する。人のやりたがらないことを率先してやるような人間。『持ってる』『風が吹く』のはなぜか、近くで見ている人間には分かる気がします」。

 仲間からも慕われている。ある2年生部員は「日ごろのごみ拾いもそうですが、すごいなと思ったのは、僕らは『トイレが汚れているな』という気づきで止まってしまうんですが、山田さんの場合は『誰かがやるだろう』ではなく、自ら率先して掃除をするんです」と明かす。

 この日、山田は勝利後の校歌斉唱を終えると「相手に敬意を表したい」と自軍のアルプス席へ駆け出す前に三塁側・聖光学院ベンチとアルプス席に向かって深々と頭を下げた。

 エース兼4番で主将の17歳。周囲に好影響を与える行動が、この先も野球の神様を振り向かせるはずだ。