セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)を破竹の6連勝で勝ち上がったDeNAは、24日からソフトバンクとの日本シリーズに臨む。リーグ優勝を飾った阪神を相手にしても圧巻の4連勝。一時は借金15のどん底も味わったが、夏場からV字回復させられた背景には相川亮二監督(50)による柔軟で粘り強いチーム改革があった。

 シーズンは序盤から誤算続きだった。先発ローテの柱として獲得したコックスとデュプランティエは、故障で春先には帰国。他にも負傷離脱者が相次いだことで、6月終了時点のチーム成績は27勝42敗2分け。最下位転落目前まで追い込まれていた。

 背広組やアナリスト、コーディネーターなどさまざまな役職を持つ人物が意思決定に関わるDeNAは、責任の所在が外部からは見えにくい。当時から「この状態の責任を相川さん一人にすべてなすりつけるのはひどすぎる」という同情論もチーム内外の関係者、OBから出ていた。

 それでも敗戦の矢面に立たされるのは常に指揮官だけ。AI解析やデータ活用を前面に出すチームカラーになぞらえ、ネット上などでは「AI川」とやゆされた。

 現代野球においてデータ運用やAI解析は他の多くのプロチームでも当然のように重視されている。「ただウチのチームは(前監督の)三浦さんの頃から、過剰すぎる〝データ信仰〟の空気があり、それらを是正しなければならないという反省や意見も現場には根強くあった」と球団関係者は証言。「実は今、それを先頭に立ってやってくれているのが相川監督。『もう少しプレーヤーとしての感性も大事にしようよ』とデータ重視の方針を時間をかけて変えようと取り組んでくれた」と明かす。

 打線の復調だけでなく片山、深沢ら若手先発投手の抜てき。浜地、レイノルズらを軸にしたブルペンの再整備なども奏功し、後半戦は32勝19敗とリーグトップの勝率をマークした。この頃あたりから相川監督は会見などで「腹をくくる」という言葉を繰り返し使うようになっていた。

 データが示す数字や確率は、あくまで判断材料の一つ。最後に決断を下し、その結果責任を負うのは生身の人間だ。相川監督は自らその覚悟を示すとともに、選手たちにも目の前の一戦、一打席、一球に対して腹をくくって勝負することを求めた。そうした姿勢が浸透したチームは最終盤まで粘り強く戦い、借金の完済とAクラスフィニッシュ、そして日本シリーズ進出まで成し遂げた。

 28年連続V逸という現実は変わらない。だが、複雑に入り組んだ組織の論理と現場の感性との間で最適解を模索し続けた1年目指揮官は、幾多の試行錯誤を重ねながらチームを立て直してみせた。「AI川」とやゆされた男が導き出した答えは、決してデータやアルゴリズムだけでは割り切れないものだった。