柔道男子無差別級で1985年世界選手権覇者の正木嘉美さんが8月30日に死去した。64歳だった。2日に全日本柔道連盟が発表した。バルセロナ五輪95キロ超級銀メダルで、現役時代に対戦経験がある〝元暴走王〟小川直也氏(58)は取材に応じ「現役時代、やり合った仲。一番自分がこれからという時に壁だった人」と振り返った。

 小川氏と正木さんには、世界選手権をめぐる浅からぬ縁がある。1987年のエッセン大会では、正木さんが95キロ超級と無差別級の重量級2階級で代表だったが、初日の95キロ超級初戦で負傷して敗退。最終日の無差別級には補欠だった小川氏が正木さんの代わりに出場し、史上最年少の19歳7か月で世界王者となった。代打出場が決まった際には、正木さんから「頑張れよ」と声を掛けられたという。
 
 小川氏の台頭で、88年ソウル五輪の重量級代表争いは84年ロサンゼルス五輪金メダルの故斉藤仁さん、正木さんの三つどもえとなって激化する。小川氏は「山下(泰裕)さんの後のチャンピオン。体を生かした柔道でもちろん強かった」といい、ソウル五輪の予選を兼ねた88年6月の体重別選手権準決勝では直接対決で撃破した。
 
 決勝では斉藤さんに敗れ、小川氏も正木さんもソウル五輪代表にはなれなかったが、「オレが若い時のチャンピオンは正木さん。今はただご冥福をお祈りします」と、先輩王者をいたんでいた。