ドジャースの「9回問題」は、表向きには新守護神で落ち着きつつある。だが、水面下でくすぶり続けているのが、大谷翔平投手(32)を10月限定で守護神に回す“禁断プラン”だ。投手復帰へ着実に歩を進める中、短期決戦で最後の3アウトを託す構想が再び現実味を帯びつつある。

 まず足元で状況が動いた。エドウィン・ディアス投手(32)は18日(日本時間19日)、右首の炎症で15日間の負傷者リスト(IL)入り。19日(同20日)のMRI検査では構造上の異常が見つからず、ロバーツ監督は「最良のシナリオ」と説明し、今季中の復帰を見込んでいる。

 その一方で「投手・大谷」の時計は再び動き始めた。14日(同15日)には7月22日(同23日)以来、23日ぶりにブルペン入り。18日には2度目のブルペン投球で全球種を交えて約35球を投げた。状態を尋ねた指揮官には「サムズアップ」で応じ、次は打者相手の実戦形式。9月の先発ローテーション復帰へ着実に前進している。

 とはいえドジャースには、大谷を慌てて先発ローテへ戻す必要がない。スクバルを補強し、スネルも復帰。グラスノーも復帰へ調整を進め、先発陣は厚みを増した。大切なのは9月に何イニング投げるかではなく、10月にどんな形で最高の一球を使える状態にするかだ。

 そこで水面下でくすぶるのが“大谷守護神論”である。米メディア「ベースボール・ナウ」は14日付で「ドジャースは大谷翔平をクローザーとして起用することを検討するだろうか」と題し、異例のプランを提示。先発陣の充実を背景に、大谷を短いイニングで起用する余地を指摘した。

 もちろん今すぐ9回を任せる話ではない。現在はスコットが守護神を担い、ロバーツ監督も19日に「今は最高で最も安定したリリーバー」と明言。同日のロッキーズ戦では今季18セーブ目を挙げた。

 それでも火種は残る。ディアスは7月29日(同30日)の復帰後7登板で3度のセーブ失敗、防御率15・88。14日のブルワーズ戦も死球と2四球で二死満塁を招き、自身通算260セーブ目をマークしたものの辛くも逃げ切る格好となった。投球時の腕の角度低下などメカニックの乱れも指摘され、米スポーツ専門局「FOXスポーツ」も救援陣の不安定さを招く「最大要因となっている」と問題視していた。

 球団は大谷について、復帰後は1イニングずつ負荷を高め、複数イニングのオープナー的起用も視野に入れる。そこから先発へ戻すのが王道だが、ポストシーズンは別物。救援登板ではDH枠を失う難題こそあるものの、負ければ終わる舞台なら“1試合限定”の劇薬を投入する価値は跳ね上がる。
 2023年3月の第5回WBC決勝では9回を締め、最後は当時エンゼルスで同僚だったトラウトを三振。侍ジャパンを世界一へ導いた実績もある。チームを勢いに乗せる面でも、インパクト十分だろう。

 ディアスが9月に戻っても本来の切れを取り戻せず、スコットにも疲労や乱調が重なれば――。地区シリーズを越え、リーグ優勝決定シリーズ、ワールドシリーズで最後の3アウトを背番号17に託す。大谷の投手復帰が進むほど“10月限定守護神”は水面下の奇策から、本番の切り札へ姿を変えていく。