ボストンの再加速を担うのは、派手な新戦力ではない。マウンドに立つたび、メジャー1年目のような高揚感をむき出しにする23歳左腕だ。レッドソックスは13日(日本時間14日)、敵地ロジャース・センターでブルージェイズに7―0で勝ち、連敗を5で止めた。

 この一戦で改めて際立ったのが、先発のペイトン・トーリ投手(23)の存在感だった。8回2安打無失点。最後は17打者連続でアウトを奪い、今季8勝目(6敗)を挙げた。

 米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」が焦点を当てたのは、数字以上に、その〝変わらなさ〟だ。昨年8月、3Aウースターでメジャー昇格を告げられた際、驚きと喜びを全身で表現したトーリは、今も同じ熱量でマウンドに立っているという。三振でイニングを締めれば感情をあらわにし、ベンチへ戻れば仲間と喜びを分かち合う。慣れや慢心とは無縁の姿勢が、快投を支えている。

 もう一つの武器が、筋金入りの研究熱心さだ。同サイトはトーリを野球の〝シームヘッド〟、つまり筋金入りの野球マニアとして紹介。与えられた映像やスカウティングレポートを読み込むだけでなく、野球史まで掘り下げて研究する。

 この日も42歳の相手先発マックス・シャーザーとの投げ合いにも強い興味を示していたが、トレーシー監督は試合後「我々が勝利を必要としていた。それが彼に必要な動機のすべてだった」と、その勝負師ぶりを強調した。

 その8回無失点が、終盤まで1点に抑えられていた打線の空気も変えた。米スポーツ専門局「ESPN」の番組「SportsCenter」ではアンカーが「トーリの快投が終盤に打線の爆発を生んだ」と指摘。8回にケーレブ・ダービン内野手(26)が12号グランドスラムを放つと、吉田正尚外野手(33)も2安打1打点。8回は申告敬遠で好機を広げ、9回には犠飛でダメ押し点をもたらした。

 15連勝から一転して5連敗を喫し、勢いに陰りが見えたボストン。だが、トーリは今季20先発で8勝6敗、防御率2.97と安定感を保つ。熱量、研究心、そして勝利への執着。若さゆえの勢いではなく、再現性のある強さがそこにある。

 この左腕が先発陣の軸であり続ける限り、ボストンの快進撃は「終わった」のではなく、再び動き出す余地を十分に残している。

トーリの好投に2安打1打点で応えたレッドソックス・吉田正尚(ロイター)
トーリの好投に2安打1打点で応えたレッドソックス・吉田正尚(ロイター)